梅雨明け前のむせかえる街の空気から逃げ出して、渋谷・松濤美術館に行ってきました。
目的は、「大正の鬼才 河野通勢展」。松濤美術館WEBサイトの紹介によれば、「粘りつくような写実描写」「奇想のイマジネーション」「近代の鬼才」。2月にはNHK教育の「新日曜美術館」でも取り上げられたようです。
河野の美術的な評価はよくわからないにも関わらず、足を運んだのは、会いたい人がいたからです。母校・長野高校図書館(戦前に作られた木造の図書館で、見事な折り天井を持っていました)で僕らを見守っていてくれた「佐久間象山先生像」が来ている、と聞いたからです。
この作品は、大正8(1919)年、母校・旧制長野中学(現、長野高校)の求めに応じて描いたもの。3年前の夏、資料調査で母校を訪れたときに久しぶりにお目にかかって以来。それからは、同窓会から頂いた絵はがきの像に見守られて研究をしてきました。
今回も、この像に見守られていた日々を思い出しながらゆっくりとお話し。他の作品と見比べると、河野らしいみっちりとしたデッサンが、象山の端正ながら剛健な人柄によく合っているように思え、彼が象山を題材に選んだこと、さもありなんと感じました。いつか書いてみたいですね、象山。
松濤美術館での会期は21日(月)までですが、11月からは長野の信濃美術館にも巡回するようです。お近くの方は、ぜひ。