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プレゼンテーション

ここにプレゼンテーションに使われた原稿を掲載する。

私達は当初、情報公開において実際に問題の一つにある第三者的救済機関についての政策提言を考え、そのために、オンブズマン制度や外国の情報公開制度などについての勉強を進めてきました。しかし日本の国家レベルの現状を知るにつれて、日本の情報公開はまだ機関設置の方法を論ずる段階にはないことに気づきました。また、今の状態でその法の制定を進めて行けば、入れ物だけが立派で、肝心の中身が伴わないのでは?という懸念が出てきました。

そこで私達は現状分析を行いその理由を大きく2つに分けてみました。 1つ目として、情報公開の主役であるはずの国民の意識が低いということ。 2つ目は、行政が情報公開を行うための、情報の整理・管理など基本的な準備ができていないということです。

私達はこれらの2つの課題に対して、グループ活動を通じ解決のための提案を考えてきました。

それでははじめに、現状分析について触れたいと思います。まず一つめに国民の意識の低さについてです。では、ここで私達が行った情報公開に対するお手持ちの国民の意識調査のアンケート結果を見て下さい。
まず、 Q1は情報公開に対する関心度を調べたものです。
国民レベルでは、理解を示している人が全体の60%。それに対し、官僚はかなり関心を示していることがわかります。
Q3 は、どの程度の公開を望むかを聞いたものです。これを見る限りでは現状維持は少なくまた、慎重を期するべきという意見が多いとわかります。
Q4は、公開に伴う弊害を尋ねました。プリントを御参照下さい。\ \ Q5は、官僚への権力の集中を妨げることができるかということですが言葉が強かったせいか公務員と官僚ではNoという意見が多かったです。
Q6は、公開によって政治がクリーンになるのかということですが、思っていたよりもあまり期待されていませんでした。

  

さて、国民の意識が低い原因として考えられるのは、実際に情報公開が国民にとってどんな利益をもたらすのかがよくわからないという点にあると思います。

ここで情報の公開による国民のメリットについて私達はこう考えました。

公開を促進することにより、国民の行政への関心を高め、行政に対する監視作用が働き、また政治家選出の選挙内容もより効果を持ちます。次に、情報は本来国民のものですから、公開することは国民の利益・権利を還元できることになります。それから、今まで存在するだけだった情報を国民が有効に利用できます。

これらのメリットを分かりやすく国民に知らせていくことが必要不可欠ではないでしょうか。

そこで、国民の意識を適切な形で高めていくために、マスコミを有効利用できないかと考えました。現在のマスコミの情報公開に対する報道は必ずしも適切とはいえません。総務庁の情報公開部会でのお話によると、

  まず、話題性がないため情報公開についてあまり取り上げない。
  次に、たとえ扱ったとしても、情報公開の制定への流れを長期スパンでとらえる視
        点が欠けているため、報道に拡大解釈や歪曲が見られる。
  また、省庁側は、マスコミ報道の拡大解釈や歪曲を懸念して、情報公開の政策の、
        公開を抑制している面があるのに、マスコミはそれを一方的に「官僚の情報
        独占」という形で報道してしまう。

    などの問題点があげられました。

以上のことより、マスコミのあり方が、国民に対して情報公開を含む行政改革そのものへの誤解を招いているということです。

これらの問題点についてマスコミ側が改善を図り、情報公開法制定に向けて国民の意識を高めるような報道をする努力を行うべきだ。これが私達の、国民の情報公開に対する意識を高めるための提言です。

それでは国民側の問題に続いて行政側の問題に移りたいと思います。私たちは実際に霞ヶ関に足を運び、各省庁の情報公開に対する取り組みについて調べてきました。 こちらの表をごらんください。(表を見せる)

省庁訪問の結果


おわかりのように、私たちが行ってきたのは 環境庁、国土庁、郵政省、通産省、厚生省、労働省の6つです。 まず行政側の情報の流通はうまくいっているかについて, 同じ省庁内の局同士の調整、情報の流通はスムーズに行なわれています。 問題なのは異なる省庁間での情報交換で、ほとんどの省庁で ほかの省庁の情報を得るのは困難であるという答えがかえってきました。

原因


こちらをごらんください。省庁間の対立意識、 手続きの複雑さ、そして情報が各省庁の所轄権限によって分散管理されていること、 これは縦割行政の弊害ともいえますが、この3 つが情報の流通のわるさの 原因といえます。

次に各省庁内での情報の整理状況に目を向けてみましょう。 各省庁には文書管理規則というものがあり、公開非公開の判断基準や情報管理の 仕方などを決めてあります。しかしお役人のなかにはこの規則を 読んだこともないひとがいるという裏話を耳にしました。 また表でみてもあきらかなように、もし情報公開法が制定された場合 すぐに公開できる状態に情報が整理されているかという 質問に対し、『困難である』『まったく準備していない』『公開できる状態に あるかどうかわからない』など、大変心細い答えが返ってきました。 また具体的な管理方法をいうと、紙を束ねたファイルが多く、 だれもが簡単に検索できるようなデータベース管理はほとんどすすんでいません。 情報の流通だけでなく、管理状態についてもあまりよいとはいえないようです。

次に、ちょっとこの表にはかいてありませんが、情報公開法に対する 省庁側の考えや姿勢についてもきいてみたところ、だいたい 前向き派、慎重派の2つのタイプに分けられます。 前向き派は、公開法が制定されたならば全面的に従い、それによって より円滑な情報の運用ができることを期待しています。 それに対して慎重派は、法律ができても公開非公開の判断は各省庁が行なう べきであると考えており、あくまでも行政側が主導する情報公開を前提 にしています。

このように情報流通や管理状況の悪さ、意識のばらつきなどをみて わかるように、もし近いうちに情報公開法なるものが制定されたとしても、 情報を国民にわかりやすく、かつ迅速に提示する用意はまだ今の段階では 行政側にはないといえます。

行政情報管理センターを作ろう


情報公開法を運営していくためには、何よりもまず省庁内の情報を整理し、管理する必要があります。それらの整理・管理システムは省庁内だけでなく省庁間の情報流通もスムーズにするものでなければなりません。情報公開法を制定するに当たって、すべての省庁の持っている情報のすべてを統括、一極管理する「情報管理センター」の設置を私達は提言したいと思います。このセンターは、内閣に属するすべての機関の上に位置します。
まず、内閣に属するすべての機関、主に省庁のことですが、これらは業務遂行上生じた情報のすべてをそのつど文書化し、センターに提出しなければいけません。これは情報管理センターの設置をする際、新法として制定し、行政側はこの法的強制力にのっとり、すべての情報をセンターに提出するのです。
公開要請のあった情報を公開とするか、非公開とするかはセンター内の判定機関で検討し判定します。この際、その情報を公開することによって影響を受けるであろう関係省庁の担当者の意見を聞く機会は、十分与えられるようにします。しかし、関係省庁が非公開をいくら望んでいても判定機関が公開の決定を下した場合は、省庁側は速やかにその情報の公開を行なわなければなりません。つまり、判定機関の構成員の人格と良識を最大限評価し、公開・非公開の判断権を一任することになります。
また、公開によって、省庁同士の対立を生じるであろう情報、例えば通産省が経済発展のための工場建設の政策を進めているとする。この情報が公開されることにより環境保全を考える環境庁との対立が生じるなどということである。
この場合、もっとも問題となるのは、省庁間の調整に時間がとられ政策の実行に時間がかかるということですが、このような情報に関しても、この判断機関が決定を下した場合は、必ず公開する方向をあえてとるべきだと私達は考えます。
多少、政策実行が遅れてもこのような情報を国民の目に見える形にしていくことのは非常に意義のあることだと思うのです。今まで、、省庁という国民から切り離された霞ヶ関の密室でこのような問題が取り扱われ、解決、政策立案されていた現状がおかしいわけで、情報公開を期にこのあたりのところも透明性を増すべきだと思うのです。
また、このように省庁間で互いの政策をチェックしあい、その状況がすべて国民に対して公開される可能性が出てくることによって、各省庁が提出する計画書の内容も様々な問題に対応した完成度の高いものになるであろうと私達は考えています。
加えて、省庁間の無意味な足の引っ張り合いも、それが国民に公開されるということにより減っていくと思うのです。
プライバシーに関する問題は勿論、原則公開せずであるが、一部公開などの判断もすべてこの判断機関が下すものとする。

段階的な情報公開法の制定について


私達は、情報公開法を一気に定めるのではなく、10年なりの長期計画を持って段階的に細かな法を定めていき、将来一つの情報公開法として集体する形をとったらどうかと考えました。
つまり、公開法の制定をその場の状況に合わせて段階的に行うということです。行政に対して強制力を持った法律によって、行政が今の段階で何をするべきかを、事細に明示することで情報公開法の最終的利用価値を高められるのではないかと考えるからです。例えばこんな感じです。

第一段階としては、現状では各省庁内で管理が不十分な情報のデーターベース化を規
                  定した法律を作ります。この段階で各省庁は自己の判断で今所有
                  している情報に関して公開・非公開の振りわけを行ないます。こ
                  の法律を仮に「行政情報整理法」としましょう。
第二段階として、次に詳しく述べる情報の一極集中管理センターの組織構造について
                  法律で定めます。ここでは、各省庁が持っている情報のすべてを
                  このセンターに吸い上げることを定め、省庁に実行してもらいま
                  す。このセンターはすべての情報の公開・非公開を判断できると
                  いう強い権限を持っている訳ですから、当然その権限の乱用が考
                  えられます。ですから最終的にこのセンターの監査機関をおきま
                  す。

さて、行政側が情報公開に不準備な状態で法律を制定しても、果たしてそれが国民にとって有益なものとなるのでしょうか?いくら法律が出来ても保管されている情報がきちんと整理されていなければ、国民の情報請求に迅速に対応することは出来ません。また、法律が制定されても実際の情報の公開・非公開の判断を各省庁に任せている限り、省庁にとって痛みを伴う情報はいつまでたっても公開されない可能性も出てきます。
官庁訪問を行なった際、どこにいっても耳にしたのは「まだ、法律が出来ていないから」という言葉でした。官僚というのは常に法律にしたがって職務をこなすのがあるべき姿なのだから、法律に規定されていない活動に関しては、なかなか腰を挙げれないの出はないのでしょうか?

最後に

私たちの情報管理センターの構想などは、かなりとっぴょうしもなく、ある意味で現実味に欠ける政策提言といえるかも知れません。
しかし、今日の日本の現状をかえていく為には、行政にも国民にもこれくらいの痛みをともなった政策転換を進めていく必要がある。
このような結論に私たちはいたりました。
それには、今までのような主権たる国民不在の政策決定から国民がより積極的に行政に参加できるシステムを造り上げていかなければなりません。
その第一歩として私たちが今回提言した情報管理センターの構想が少なからず力を発揮できるのではないでしょうか。
情報公開法が制定されることにより国民が政策過程に参加しまた、監視することが可能となることでしょう。
情報公開は私たち国民のためにあるのです。



Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997