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科学技術庁を訪問して

情報公開制度が国民の適切な判断を助ける十分な情報を提供する制度である以 上、この制度によって公開された情報を利用して国民は何らかの判断をするこ とができるはずだ。そこで、我々はこの制度を利用して原子力発電が安全 かどうか実際に判断してみることにした。

「原発の安全性に関して、公開されている情報で国民は原発が安全かどうか判 断できるか?」

という命題の真偽を確かめるために、我々は実際に科学技術庁を訪れた。ただ し、原発の安全性に関する情報と一口に言っても、その内容は多岐にわたり具 体性を欠くため、この際我々は、「青森県六ヶ所村の核再処理施設の耐震性に 関する情報」を集めることとした。

科学技術庁で、前述の趣旨を説明すると廊下の片隅にある情報公開コーナー のようなところへ案内してくれた。そこには、鍵のかかる本棚が置かれており、 科学技術庁の所有している情報の内、公開できるものは、その中に保管されて いた。我々は係の人が差し出した閲覧者名簿に名前と住所と学校名を記入した 後、十数冊あった六か所村の核再処理施設に関係する資料の中から「六ヶ所村 の核再処理施設の耐震性に関する」と思われる情報を、ピックアップしようと した。しかし、自由に閲覧して良いものの、それらの資料は専門的な用語が連 なっていたり、数字データや設計図のようなものが多くて我々には難解なもの だった。また探したいものがあっても資料が検索しやすいようにファイルされ ていなかったため、資料を探すのは困難であったし、仮にその膨大な資料の中 からやっとの思いで目的の資料を見つけることができても、それをコピーする ことは許されておらす、(コピー機は隣に置かれてあった。)実質上公開されて いないのと同じだった。  

結局、我々は現在の情報公開制度を利用して、六ヶ所村の核再処理施設の耐震 設計が十分かどうかを判断することはできなかった。もちろんこれは我々に原 発や耐震性についての知識が皆無であったことが非常に大きな原因としてあげ られる。しかし、素人は素人なりにはきりとした目的意識を持って行ったにも かかわらず、同施設の耐震性に関する情報をコピーしてもって帰るどころか見 つけることさえ困難だったのは現在の情報公開制度の方にも問題があるのでは なかろうか。今回我々は、六ヶ所村の核再処理施設の耐震性が十分かどうかを 知りたい一国民として情報公開制度を利用してみたのだが、まだまだ現状の情 報公開制度では不十分だという感想を持った。



Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997