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あとがき

1・はじめに
この春学期、グループワークは間違いなく私達の生活の中心であった。はじめ は気が遠くなるほど長く感じた二ヶ月間であったが、終わってみればほんの一 瞬の二ヶ月であった。山登りでも登っている途中は苦しく、長く感じるが、山 頂についた瞬間、いままでの苦しみを忘れ、素晴らしい満足感で胸が一杯にな る。この二ヶ月間はそんな比喩がまさに当てはまる。苦しい時期を経てこそ真 の成長がある。その意味で、グループワークは良い機会になった。ここでは私 達の二ヶ月間を簡単に述べたいと思う。

2・ グループワーク
プレゼンテーションを行う上で最も重要なことの一つはテーマ選びであると思 う。言うまでもなくテーマによって後のグループワーク、プレゼンテーション が大きく左右される。はじめの二週間のリサーチを経て、私達は情報公開を選 ぶことにした。ただ官庁取材が面白そうだという理由である。だが情報公開の 班が多く、絞ることになったので、明確な理由を用意していなかった私達はあっ さり規制緩和に変えた。その後、考えられるテーマの中から生活に密着したも のということでガソリンスタンドのセルフサービス化を選んだ。しかしその後 も行政改革、その中でも大蔵省主計局の内閣への移動をテーマにしようという 意見もあり。どちらを選んだらよいか非常に悩んだが、直に私達に関係のある セルフサービス化を推す声が優勢になり、結局ガソリンスタンドのセルフサー ビス化をテーマに選んだ。

このテーマの難しいところは具体的すぎることだった。テーマが具体的すぎて、 採り上げている書物や精通している人が少なかった。そこで私達はセルフサー ビスにこだわらずガソリンに関すること全般に範囲を広げてリサーチを行った。 まず私達は疑問に思ったのは、果たして消費者は本当にセルフサービスを望ん でいるのか。どれだけのガソリンスタンドがセルフサービス化を実行する気が あり、また実行可能なのか。どれだけの人がセルフ化によって解雇され、また それが社会、経済に与える影響はどれほどのものか。既にセルフ化されている 欧米の実施当時の状況と現状はどうなのか、ということであった。そこで私達 はガソリンスタンドや石油会社に取材を行い、消費者へのアンケートを試みた わけだが、知識不足を痛感することになった。フィールドワークが非常に有効 な手段であることは解っていたが、十分な準備をしていかなければ成果があま り期待できず、相手にも失礼なのではないかと思い、取材を遅らせることにし た。規制緩和自体をよく理解していなかった私達は一週間グループワークをオ フにして、規制緩和に関して推薦されている本を一冊読んでまとめて来る作業 を行った。スケジュール的に厳しくはなったが、結果的には非常に勉強になっ た。その後、とにかくフィールドワークを行うことにした私達は、慶応大学経 済学部の中条教授に取材し、他にも一橋の中谷教授や経団連への取材を試みた が都合があわず実施できなかった。

明確なビジョンが見えてこない私達を救うことになったのは通産省への取材で あった。タイミングよく取材の直前にこのテーマに関係のある研究会が開かれ ており、欧米における石油流通産業の合理化、一SS(ガソリンスタンド)当 たりの従業員の推移、消費者がSSに要望するサービス、そして、通産省が考 えるSSの発展方向など、貴重な資料を手にすることができた。ここで参考に なる意見が聞けたわけだが、通産省の資料や話には従業員への配慮が見られず、 そこを尋ねたところ、労働省の管轄だといわれた。共同で研究することもない らしく、私達は縦割り行政の実態を垣間見た気がした。また、資料には規制緩 和によるメリットが強調されおり、欧米の例よりデメリットを調べようとイン ターネットなどを駆使したが、成果は得られなかった。

資料がある程度出揃ったところで、今度はどのようにまとめるかで議論が起こっ た。主な論点は二つ、一つはできるだけセルフサービス化に話をまとめるべき であるという主張と、それに対するガソリン全体の話に広げるべきだという主 張、もう一つは、私達の提言をガソリン業界のみに限定するべきか、それとも 規制緩和全体、政府レベルまで言及するべきだというものであった。セルフサー ビスだけでは内容が乏しく、ガソリンに対する影響も小さいので、ある程度ガ ソリン全体に触れることにした。提言については、政府や企業に対して消費者、 社会的に弱い立場の人に配慮するよう訴え、しかもガソリンの価格を下げる手 段も提案した。

3・ プレゼンテーション
初期段階での最重要事項がテーマ選びだとすると、最終段階でのそれはプレゼ ンテーションの体裁を決めることであろう。いくら内容が優れていてもプレゼ ンテーション自体が無味乾燥であったら台無しである。私達が悩んだのは、で きるだけ多くの内容を伝え、かつできるだけ観客の関心を引きつけるにはどう すればよいかである。ふだんから皆が関心をもっているわけでもない、具体的 な石油というテーマからしてただ書画カメラを使って説明しただけでは多くの 内容を伝えられるかもしれないが、観客の関心を引くことはできない。はじめ 私達はビデオを使ってニュースの特集のようなものを作ろうとしたが、通産省 のインタビューの際にビデオのバッテリーを充電していなかったという致命的 なミスのため中止となり、劇にしようという話もあったが、班員の一人がプレ ゼンテーション用ソフトを持っていたので急遽それを使うことにした。これに よりグラフや重要語句がタイミングよくスクリーンに映し出すことが出来、ま た、珍しさゆえに観客の関心を引くことができた。その他、司会がラジオのD J風に英語を使ってインパクトを与えたり、班員にガソリンスタンドの従業員 の服装をさせてインタビューしたり工夫を凝らした。さらに班員全員に参加し てもらうために何人かの班員を観客席に座らせ、観客への質問のときに観客役 をやってもらった。わざとらしいところが逆に良かったと思う。本番前夜は時 間内に収まるように何回も練習した。本番ではわずかにオーバーしてしまった が、十分に練習の成果を出せたと思う。

4・ まとめ
このグループワークを通じて班内では規制緩和賛成派と反対派に分かれていた。規制緩和についてある本では万能薬のように、またある本では副作用の大きい危険なものとして、特にアメリカの悲惨な状況を例に出して書いていた。規制緩和のもたらす未来は幸か不幸か。本の著者に取材を試みたが、都合上できなかった。しかしプレゼンテーション当日のディスカッションで問題は解決した。つまり、今のアメリカはほぼ規制撤廃が完了した状態であり、発生している問題はそれ故の結果である。日本はまだほとんど規制緩和が実施されていない状態なので、規制緩和の結果を懸念するよりも先ず実行に移すのが先決である。また、グループワーク、ディスカッションを通して規制緩和、情報公開、行政改革の密接な関りを痛感し、特に情報公開に関係があるかもしれないが、私達も含め国民の関心の低さと知識のなさもわかった。政治や体制を改革するには国民の力が必要であり、そのためには一人一人が関心を持ち、真実を知ることが重要である。今回の私達の活動が布石になることを願い、今後も社会に貢献できるよう精進する決意である。

5・ 最後に
最後に、本当に素晴らしいメンバーと共にグループワークを行えたことに感謝 したい。振り替えればフィールドワークをもっと行えば良かった、などと反省 点が絶えないが、私達はこのグループワークの仲間という最高のものを得るこ とが出来だ。グループワークの最大の成果といっても過言ではないだろう。メ ンバー一人一人が忙しいなか、親に怒られ、終電に乗り遅れては、タクシーの おじさんに白い目で見られたりしながら、一つのものを作り上げるために力を 合わせた。一人一人が実に素晴らしい個性と能力を発揮した。作業が進まずに 悩んだ時期もあったが、このメンバーだからこそ乗り越えられたと自負する。 グループワーク中盤では二度とグループワークをやるまいと誓ったが、今では もう一度くらいやってみたい気持ちである。私達はこの二ヶ月で非常に多くの 貴重な経験をした。これからもこの貴重な経験と素晴らしい仲間達を宝として 行きたい。

6・ 謝辞
大成功であったと確信するプレゼンテーションであるが、私達だけではこの成 功は有り得なかった。勉学活動の手段が書物だけになりがちななか、フィール ドワークをとおして現場の人の声が聞けたのは貴重な体験であった。話の内容 は無論、実際に霞ヶ関に行ったり、石油会社に取材したり、学者に話を聞くと いう体験自体が非常に勉強になったと思う。私達がこのような経験をすること ができたのも、御忙しいなか、稚拙な私達の取材に懇切丁寧に応じて下さった 方々のおかげである。心から感謝申し上げたい。最後にしかし最小ではなく、 今回のような素晴らしい機会を与えてくださり、御指導していただいた草野教 授ならびにSA、TAの方々、そして色々とアドバイスしていただいた先輩方 に心から感謝いたします。



Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997