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記者クラブとは

  みなさんは「記者クラブ」というものをご存知ですか?

               導入
状況説明:A=一般大学生で、記者クラブの知識が全くない人。
              常に素朴な疑問をBに投げかける。
          B=6班の人。記者クラブと情報公開について説明する。

A:ねえ、今情報公開されてるの?
B:いきなりそんなこと言って、「情報公開」の意味わかってるんですか?
A:映画の「JFK」で見たやつと一緒でしょ?ケネディー大統領が暗殺され
    た事件の報告書が何十年後かに公開されて、殺した犯人がわかるっていう
    やつ。
B:確かに今まで秘密にされてきた、昔の出来事についての文書を公開するこ
    とも情報公開ですが、情報公開は、それだけじゃないんです。
    現在の行政や政治の情報も、一般国民から隠されているんです。
A:例えば何?
B:「行政改革で特殊法人の銀行を統合すると、大蔵省の官僚の天下りができ
    なくなっちゃうから、大蔵省が改革をはばんでる」といった、官僚が行政
    の裏で、本当はどんな思惑で動いているのかなどの情報です。
A:なんで、そういう生の情報は隠されているの?
B:原因の一つは「記者クラブ」にあります。
A:記者クラブって何?鉄道研究会のこと?
    <書画カメラで、×汽車クラブ  〇記者クラブ  を出す>
B:違います。後で細かく説明しますが、記者クラブとは朝日や読売といった
    大手新聞社の記者が、大蔵省などの官庁のビルや国会の一室に集まってい 
    るものをいいます。
A:集まって何してるの?
B:決まった時間になると、大蔵省事務次官などの官僚や政治家が部屋に来て、
    その日に官庁であったことを発表したり、記者の質問をうけたりします。
A:別に悪いことじゃないんじゃない?
B:ところがすっとこどっこい。表向きの記者クラブは悪くないんですが、裏
    では、官僚や政治家と癒着して、彼らの情報を隠したり独占したりしてる
    んです。
A:えーっ、どうやって?
B:詳しいことは、私たちのプレゼンテーションを見て下さい。
    私たちは、情報公開を進めるために、記者クラブとマスコミをどう変えれば 
    よいかを考えました。

                                        プレゼンテーション台本「導入」より
  記者クラブと情報公開の導入は、このようであった。とりあえず、記者クラブは悪、というスタートであるが本当はどうなのだろうか。
                            実態
  記者クラブは、政官財の各機関に設置され、公式会見や非公式な懇談を通して国民に各機関の情報を伝えています。記者クラブでは大手新聞社やテレビ局の記者をその構成メンバーとし、週刊誌や外国人記者に対しては、クラブにより差はあるものの、一般に閉鎖的、排他的といわれています。
  記者クラブは実際は取材機関としての機能を果たしていますが、日本新聞協会によれば、名目上「親睦社交団体」であるとされています。なぜなら、取材機関としてしまうと、常にすべての報道機関にクラブの門戸を解放しなくてはならないからです。
  クラブの閉鎖性がもたらす、情報の独占状態が懇談の場での、情報源との慣れ合いなどの思わぬ弊害を生み出しているのもまた事実です。

                                        プレゼンテーション台本「実態」より
  上に書かれているように、記者クラブは「親睦団体」として定義づけられている。しかし、実際は取材機関としての機能を果たしている。記者クラブのメンバーが、限られているため記者クラブは排他的であるという批判がある。また、記者クラブのメンバーであると懇談などのオフレコ会見にでる機会もあり、情報の独占状態が成立しているという批判につながっている。取材先の記者などは「記者クラブは情報の談合組織」と例えていた。そして、この閉鎖的な空間でマインドコントロールのおこる可能性というのは十分ありえ、危険なことである。特に各新聞の記事の類似性はいくらメディアが中立であるとはいえ不気味なことである。
  また、もう一つの問題として懇談などの場では、人間関係が重要になり、それによって記者側とニュースソース側の癒着(都合の悪いことを書くと情報を得ることができなくなる)関係がある。これに対して取材先では「企業の立場とマスコミという立場のバランスをとることが大事」といっていた。
  それでは、記者クラブにはメリットと言うものがあるのだろうか。
                  メリット・デメリット
  
  それでは、具体的に記者クラブのメリットをあげてみましょう。
  第一に、記者クラブには、一次情報が集中することがあげられます。ここでいう一次情報とは、文書化されている、行政や政治の情報で、記者クラブが開催する公式記者会見で発表されているものです。
  第二に、各新聞社やテレビ局が、個々に問い合わせる必要がないので、情報集めの無駄な競争を避け、効率的な取材ができます。
  第三に、クラブ内で団結すれば、マスコミ側の主張が通せます。
  第四に、公式会見以外でも、懇談会、夜討ち、朝駆けで、官僚や政治家と個人的に親しくなり、公式では得られない情報を入手できます。夜討ちとは、官僚や政治家の自宅で記者が待ちかまえ、彼らが帰ってきたら、家にいれてもらい、裏の情報を聞くことです。朝駆けも、官僚や政治家の自宅に彼らが出かける前から出向き、話をきくことです。
  以上は、記者クラブから見たメリットですが、これらは、逆に国民にとってのデメリットにもなりえます。
  第一のメリットは、政府や官僚に情報操作される危険性があります(危険性につながります)。官庁や政治家からの発表が多過ぎるため、記者は独自の取材ができず、官庁が流す情報をそのまま記事にする傾向があります。そのため、記事がどこのメディアもにかより、国民は多様な情報から、公正な判断をする機会を奪われています。
  第二、第三のメリットは、集団であるために、クラブ内で思想が似てきてしまい、政府を監視する機能を失う可能性があります(同じくつながる可能性をもちます)。
  第四のメリットは、政府と記者が癒着し、記者が官僚や政治家を批判する態度がなくなる可能性があります(につながります)。また、官僚や政治家が隠したがる情報を、夜討ちなどで得ても、オフレコと呼ばれるように、記事にしないことがあります。先の下水道談合事件を例にあげると建設省記者クラブは、談合に気づいていましたが、官僚と癒着しているため、報道をなかなか行いませんでした。

                      プレゼンテーション台本「メリット、デメリット」より
  上のように記者クラブのメリットとデメリットは視点によって完全に逆になってしまう。つまり、記者クラブをまるで悪とはいえないし、かといってこのような体質を黙って許していいわけでもない。その価値判断は結論(第六章)にでもまかせるとして、最後に外国ではどうなっているのかという点について考察し、ひとまず記者クラブはどういったものか、という一章を終わり、次は情報公開について考えたいと思う。
  諸外国にもプレスクラブというものは存在するが、日本のような報道機関ではなく全くの親睦団体としてのものである。日本の外人記者クラブもそのような趣旨でつくられている。
  公式記者会見については物理的制約から登録をしてチェックを受けるなどの審査がある場合もあるが基本的には誰でもでることはできるようだ。アメリカでは大手新聞社は会見の前の方の席を与えられている。そして、基本的な質問については事前に内容などを話し合って決めている。
  非公式会見はやはり存在するが、日本のように記者クラブでなければ行けないということはなく、外国人でも出ることはできる。しかし、この会見で話されることは、ニュースソース側の政治的意図が十分に含まれており、これをそのまま記事にすることは絶対にしない。
  外国との比較を担当してくれたメンバーが書いた、「諸外国の記者クラブと比較した日本の記者クラブの問題点」の部分を紹介しておきたい。
  日本の記者クラブの問題は、記者クラブの存在そのものではなく、記者会見などに特定の人、つまり16社プラスアルファしか入れないということにある。
  一元的に16社を押えれば中央情報は別のチャンネルからは信頼のおけるものが出てこない仕組みになってしまっている。つまり、日本の記者クラブは一元的に情報の流れを管理するために使われてしまっている。
  このレポートが書かれたのはグループワークが始まってすぐの時期である。情報の一元的管理を情報公開がどう変えるのか、という論点を私達が持った、ということを念頭に先へ進んでもらいたいと思う。



Atsushi Kusano
Sat May 10 19:30:05 JST 1997