☆経済の好調
96 年第二四半期実質経済成長率4.7%。失業率5.1%。(1989年以来の最低) 「ブレーキのアクセルも踏む必要がない安定走行状態」(エコノミスト)
悲惨指数の下降。経済の好調(「米経済はよい状況」と感じる有権者は53%と 前回92年を15%も上回った)
上記の理由もあってか、大多数の国民が「米国は正しい方向に向かっている」
と答えている。大統領の首をすげ替える理由があまりなかったということであ
ろう。
☆選挙戦略
クリントン大統領の中道路線化によって両候補者間に争点が少なくなった。人
工妊娠中絶、銃規制などの社会的争点で争われることになったが、クリントン
大統領はむしろこの点によって女性票をのばしたといえる。
☆実績
受け継いだ時点での(92年)財政赤字は2900億ドル(対GNP比4.9%)だっ たが、96年には1160億ドル(同1.5%)と大幅に改善した。原因は国防費を含 む支出削減、高所得層への増税、そして景気が好転し、課税対象所得が増大し ていること。
また、通商実績として自動車、半導体が挙げられよう。交渉の決着によって票 の獲得に結びついたのが、オハイオ、ミシガン、イリノイ、カリフォルニア。 半導体は実質的には米が「二国間協定の延長」を勝ち取ったと解釈できる。な ぜならばEUや韓国なども「世界半導体会議」には参加できるとしてあるが、 関税撤廃が前提となるため。
外交実績を挙げるならば、アラファトーネタニヤフ会談のセッティングなど。
☆共和党の失敗
財政均衡論議では、共和党が老人のメディケア(高齢者向け医療保険)、弱者 のメディケイド(低所得者向け医療保険)をカット、教育費や福祉予算までも 削減する元凶とされ、老人、弱者、マイノリティー(少数民族)、女性など選 挙対策を考慮すれば決して敵に回してはならない層を敵に回したことは重大な 戦略的ミスといってもよい。この点では、強硬策一本槍の議会運営で世間の不 興を買い、当時上院院内総務だったドールも巻き込んでしまったギングリッチ (下院議長)の責任は大きい。
これに対し、民主党はギングリッチを富裕層厚遇、高齢者・貧困者虐待策の信 奉者として色づけることに成功した。
☆ドール
勝てる要素なしでの得票率41%はむしろよく頑張ったといえるのではないだろうか。