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第8週: 文書処理(2)
先週に続き,日本語LaTeXについて勉強します.
8. 1 復習
8. 2 表を作る
8. 3 練習問題
8. 4 図を入れる
8. 5 数式を書く
8. 6 練習問題
8. 7 ソースファイルの分割
8. 8 練習問題
8. 9 その他の制御語
8.10 論文の書き方
8.11 宿題
8.1 復習
先週は,LaTeXについて次のようなことを勉強しました.
- LaTeXの処理の仕方.
- ソースファイルの書き方.
\documentclass[クラスオプション]{文書クラス}
プリアンブル
\begin{document}
本文
\end{document}
|
- 制御語には次のような種類があります.
- \maketitle や \today のように,その場で何らかの処理を行うもの.
- \gtfamily や \large のように,それ以後の文章に影響を与えるもの.
{} で囲むと有効範囲を制限できます.
- \section のように,直後の{} の中の文字列に対して作用するもの.
- \begin{itemize},\end{itemize} のように,ある範囲の文章を囲むもの.
8.2 表を作る
表の
作成 331ページ
箇条書とならんで,
表は文書を分かりやすく見せる上で欠かせないものです.
表は,次の形式で作るのが基本です.
\begin{tabular}{項目の出力形式}
項目 & 項目 & … & 項目 \\
項目 & 項目 & … & 項目 \\
:
:
項目 & 項目 & … & 項目
\end{tabular}
|
つまり,表は行からなっており,行と行の間は\\
で区切ります.
各行は,項に分かれています.項と項の間は&で区切ります.
各項の文字列の長さから,LaTeXが自動的に表の大きさを決めます.
縦方向の項目の揃え方は,項目の出力形式のところで指定します.
- l: 左詰めにする (left)
- c: 中央におく (center)
- r: 右寄せにする (right)
一般に,項が文章なら,左詰め,数値なら右詰め,短い単語などでは
中央配置がよいことが多いようです.
例として,SFC の学部の表を作ってみましょう.
\begin{tabular}{cll}
学部 & 学部長 & コース \\
総合政策学部 & 鵜野 公郎 & 政策管理,社会経営,国際政策 \\
環境情報学部 & 斎藤 信男 & 知識情報,人間環境,メディア環境
\end{tabular}
|
これをソースファイルの本文に書き込み,
platexで処理してみましょう.
どんな風に出力されるでしょうか?
先ほどの表は,罫線がないためあまり表らしくありませんでした.
そこで,今度は罫線をつけて,もう少し表らしくしましょう.
-
行の先頭に \hline を書くと,その行の上に横方
向の罫線を引きます.一番下に罫線を引くためには,最後の行の次に \\ と \hline を書いて,
罫線だけの行を作ります.
-
項目の出力形式を表すl, c, r の間に | を書くと,その位置に縦方向の罫線を引きます.
-
\hline, | を2回続
けて書くと,二重線で罫線を引きます.
\begin{tabular}{|c||l|l|}
\hline
学部 & 学部長 & コース \\
\hline
\hline
総合政策学部 & 鵜野 公郎 & 政策管理,社会経営,国際政策 \\
\hline
環境情報学部 & 斎藤 信男 & 知識情報,人間環境,メディア環境 \\
\hline
\end{tabular}
|
ソースファイルを上のように書き換えて,
platex で処理してみましょう.
以下のようになるはずです.
複数の列にまたがる項目を作りたいときは,\multicolumn を使います.
\begin{tabular}{|c|l|l|}
\hline
\multicolumn{3}{|c|}{慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス} \\
\hline
学部 & 学部長 & コース\\
\hline
総合政策学部 & 鵜野 公郎 & 政策管理,社会経営,国際政策 \\
環境情報学部 & 斎藤 信男 & 知識情報,人間情報,メディア環境\\
\hline
\end{tabular}
|
この例で,\multicolumn の次の{3} は3列分の場所を取るということ,{|c|} はその場所の中央に項目を置き,両側に縦罫線を
引くということ,{慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス}
は項目の文字列を示しています.
8.3 練習問題
住所録を表として作ってみましょう.住所録には,名前,住所,電話番号な
どが必要です.罫線を使ってきれいに作りましょう.
8.4 図を入れる
画像
ファイルの貼り込み 333ページ
LaTeXに図を入れる方法は2種類あります.
- picture 環境
-
\begin{picture}...\end{picture} の間に,線や四角などの図形を描く制御
語を書きます.
-
xfig を使うと,マウスで描いた図形から自動的
に picture 環境用の制御語を生成してくれます.
- EPS ファイルの貼り込み
-
EPS(Encapsulated PostScript) とは,ポストスク
リプト形式のデータに対して,他の文書に埋め込めるように印刷位置の情報を
付け加えたものです.
-
LaTeX のソースファイルや DVI ファイルと,EPS ファイルは別のファイルに
なっています.dvi2ps でポストスクリプト形式
に変換するとき,EPS ファイルが適切な位置に貼り込まれて,プリンタに送ら
れます.
-
EPS ファイルの作り方にはいろいろな方法があります.
-
マウスで絵を描いたり,スキャナで写真を取り込んだりするソフトの中には,
直接 EPS を出力するものがあります.
-
EPS 以外の形式で保存された画像ファイルは,xv
などを使って EPS に変換することができます.
-
画像処理ソフトの使い方は第10週で詳しく説明します.
ここでは,あらかじめ用意された EPS ファイルを貼り込む方法を練習します.
/pub/sfc/ipl/1a/exercise/photos/01.ps というファイルに,特別
教室の写真がありますので,これを貼り込んでみましょう.
LaTeX は,そのままでは EPS ファイルを扱えません.EPS ファイルを貼り込
みたいソースファイルでは,プリアンブルで epsf パッケージを読み込むよう
に指定する必要があります.パッケージ(package)
とは,LaTeX の機能を拡張し,新しい制御語を付け加えるソフトです.
\documentclass[クラスオプション]{文書クラス}
\usepackage{epsf}
\begin{document}
本文
\end{document}
|
本文の中で,図を貼り込みたい位置には次のように \epsfile を書きます.
\epsfile{file=/pub/sfc/ipl/1a/exercise/photos/01.ps,scale=0.5}
|
-
file= の後に EPS ファイルのパス名を書きます.
相対パス名で指定すると,platex コマンドや
dvi2ps コマンドを実行するときのカレントディ
レクトリが基準になります.
-
scale= の後に拡大倍率を書きます.ここでは元
の0.5倍にして貼り込んでいます.そのままの大きさでは,文とのバランスが
悪いことがありますので,ここで調整します.必要がなければ省略できます.
-
パス名と拡大倍率の間はコンマで区切ります.空白を入れるとうまく動きませ
んので,注意してください.
xdvi で見ると,図のところは白い四角になりま
す.これは,EPS ファイルの処理に時間がかかるので,通常はレイアウトの
確認用の枠だけを表示するからです.図の内容も表示させたいときは,PS
Fig ボタンをクリックします.
このままでは文章の途中に図が貼り込まれます.ページの上や下に,文章とは
独立して貼り込みたいときは figure 環境を使い
ます.
\begin{figure}
\begin{center}
\epsfile{file=/pub/sfc/ipl/1a/exercise/photos/01.ps,scale=0.5}
\end{center}
\caption{特別教室}
\end{figure}
|
8.5 数式を書く
LaTeXでは,数式を書くための特別な機能があります.
- 数式モード
- $と$で囲みます.
- 前後の文章に続けて表示されます.
- ディスプレイ数式モード
- $$と$$で囲みます.
- 独立した行で表示されます.
数式モード,ディスプレイ数式モード内では,<, >, -などの記号が数学記号として美しく出力されます.ま
た,アルファベットは変数としてイタリックで表示されます.
数式モード,ディスプレイ数式モード内で使える機能には次のようなものがあ
ります.{} の中が1文字の場合は {} は省略できます.
- 上つき添字: ^{添字}
例: x^2
- 下つき添字: _{添字}
例: x_i
- 分数: \frac{分子}{分母}
例: \frac{1}{10}
- 平方根: \sqrt{引数}
例: \sqrt{3}
- 省略記号: \cdots
例: 1+2+\cdots+n
8.6 練習問題
2次方程式の解の公式を書きなさい.ただし,プラスマイナスの記号は \pm です.
8.7 ソースファイルの分割
ソースファイルの分割
本文を複数のファイルに分けて用意しておき,それをソースファイルに読み込
んで,一つの文章として LaTeX で処理することができます.一つのレポート
を複数人で分担して書く場合などに便利です.
ソースファイルの中に \input コマンドを書くと,
指定したファイルの内容を読み込んで処理します.
\documentclass{jarticle}
\begin{document}
\input{part-one.tex}
\input{/home/t99000xx/report/part-two.tex}
\end{document}
|
-
ファイル名を指定するとき,ホームディレクトリを表す「~」は使え
ません.
-
読み込まれるファイルの中に \documentclass や
\begin{document} があると,読み込んだときに
重複してエラーになります.
8.8 練習問題
先週の宿題で書いた文章を,隣の人の文章と合
わせて一つの文章にしてみましょう.
-
まず,先週書いた文章から文書クラスの指定,プリアンブル,\begin{document},\end{document} を消します.
-
消したい行の先頭に「%」を付けてコメントにしておくと,簡単に元に戻すこ
ともできます.複数行まとめてコメントにするには,マウスでその部分をドラッ
グしてから YaTeX メニューの Comment region or
environment をクリックします.
-
次に,このファイルを読み込むためのソースファイルを作ります.自分のファ
イルの読み込みと,隣の人のファイルの読み込みを指定します.
-
このままでは誰がどこを書いたのか分かりません.\part を使って書いた人の名前を入れましょう.
8.9 その他の制御語
- 目次
目次
の作成 342ページ
-
\tableofcontents を本文中に書くと,その位置
に目次が出力されます.
-
1回目の platex コマンドでは,まだページ数が
分からないので,目次は出力されません.もう1回 platex コマンドを実行すると,正しく出力されます.
- 参考文献リスト
参考
文献リストの作成 343ページ
-
thebibliography 環境と \bibitemを使います.
\begin{thebibliography}{9}
\bibitem{label1} SFC CNSガイド第III部第2章「LaTeXの基本的な使い方」
\bibitem{label2} L.Lamport, LaTeX, アスキー出版
\end{thebibliography}
|
これを処理すると,以下のようになります.
この例で {9} と書いてあるところには,文献番
号の桁数と同じだけ9を並べて書きます.ですから,文献が10個以上あれば,
{99} にします.
-
\bibitem の後の {}
の中に書いたラベルは,本文中でその文献を参照するときに使います.\cite{label1} と書くと,その文献の番号が出力されま
す.
-
\cite による文献番号を正しく付けるには,platex コマンドを2回実行しなければなりません.
- 脚注
脚注
343ページ
-
ページの下に注釈を書きたいときは,\footnote
を使います.
文章の中で脚注を振りたい場所\footnote{脚注として出力したい文字列}続きの文章
|
これを処理すると,以下のようになります.
LaTeX にはまだまだ書ききれない程たくさんの機能があります.
CNS ガイドや市販の本を参考にして勉強してください.
8.10 論文の書き方
論文や学術的出版物は,だいたい次のような構成になっています.
- 表題
- 著者名(所属)…場合により連絡先を書くこともある.
- 日付…付けないことも多い.
- 概要 (abstract)…全体の内容の簡単な要約.
- 目次…短い論文では付けない.
- はじめに(序論)…問題の背景,これまでの経過等を書く.
- 本文…さらに章や節に分かれる.考察を含める.
- まとめ (結論)…全体をまとめる.
- 謝辞…協力してもらった人への感謝の言葉.
- 参考文献…参考にした文献のリスト.
- 付録…本文に含めると冗長になるような資料等.
- 索引…短い論文では付けない.
学術雑誌に投稿するときは,その雑誌によって細かく体裁が規定されています.
主要な雑誌の場合は,その雑誌用の LaTeX 文書クラスやパッケージなどが用
意されているので,自動的に正しい体裁で印刷できます.
8.11 宿題
/pub/sfc/ipl/1a/exercise/photos にある写真から何枚か選び,SFC
の学生生活を紹介するパンフレットを作りなさい.
写真一覧
注意: あまりた
くさん写真を使うと,データ量が多くなってプリンタで処理しきれないことが
あります.写真はほどほどに使いましょう.
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