「真の国際化」に向けて

2008.12.10 Wednesday 23:00
井庭 崇


ここ半年ほど、ずっと気になっていることがある。「国際化」という問題だ。もっと具体的に言うと、現代のグローバル社会で「生き生き」と生きていくためにはどうしたらよいのか、という問題だ。これは、僕個人の問題でもあり、大学・学部の問題でもあり、日本社会の問題でもあると思う。

僕自身がまだまだ国際化できていないので、大きなことは言えないのだが、現在、日本や大学で語られている「国際化」の議論はどうも手ぬるいと思う。「国際化」といいながら、格差を活用した「アジア化」という印象が拭えないからだ。例えば大学を例にとると、欧米先進国も含めて全世界から留学生を受け入れる体制を整えるというよりは、アジアからの学生をいかに受け入れるのか、という点が議論の中心となっているように見える。アジアとの連携が重要でないとか、欧米を重視すべきだというつもりはさらさらないが、「国際化」の議論がその観点からのみなされているという現状は、問題だと思う。それでは、真の国際化には到達できない。

また、海外から外国人を受け入れる「大学・学部の国際化」も重要だが、「日本人の学生がどう国際化するのか、それをいかに支援するのか」という話もとても大切だと思う。それを正面切って支援できなければ、これからの大学は使命を果たしていないということになるのではないか。さらに、この問題は、国際化を支援・推進する教職員自身の国際化の問題とも密接に関係している。

近年、フラット化した世界を基盤として、グローバルなコラボレーションが可能となっている。そのコラボレーションを楽しみながら、新しい物事を生み出していくためには、アウトプット能力もコミュニケーション能力も高めていかなければならない。また、文化の違いに敏感であり、しかしながらその背後にある共通項を見いだすことができるセンスも必要となるだろう。ただし、語学力があったり多文化に精通していたりするだけではだめで、新しい付加価値を含むアウトプット(創造・実践)の力が伴わないといけない。

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