自己変革能力のある社会システムへの道標(抜粋)#1

2009.10.27 Tuesday 00:13
井庭 崇


最近、集合知(collective intelligence)を使うことで新しい政治の可能性が開けるのではないか、という議論が始まった。その問いに対する僕の解答はしばらく時間をもらうことにして、このブログでは、関連する情報や考えを紹介していきたいと思う。

まず最初に紹介したいのは、僕がいまから11年前に書いた論文である。タイトルは、「自己変革能力のある社会システムへの道標:複雑系と無気力の心理学の視点から」。この論文は、学術論文としてではなく、懸賞論文として書かれたものだ。結果は、読売新聞社主催の第四回読売論壇新人賞の佳作となった。最優秀賞でないのが残念なところだが、論文をほとんど書いたことがないコンピュータ・映像系の学生が、社会人相手に戦った結果としては、まずまずの結果だとも言えなくもない。これを書いたのは修士の学生だったときで、福原くんとの共著『複雑系入門』(NTT出版)を書いた直後である。

この論文で書いたことは、多くはいまでも僕の根本的な問題意識となっている。1998年当時を思い起こしてもらえればわかるように、インターネットの社会的普及という面では、まだまだ序盤であった。もちろん、Web 2.0なんて言葉も事例もない時代であり、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンがちょうどGoogleを立ち上げ始めた頃のことだ。いま振り返れば、この論文で最も欠けているのは、「集合知」技術への視点である。上に述べたように、時代背景的には発想できなくて当然といえば当然なのであるが、複雑性の縮減をいかに行うかということに答えていないということは認めなければならない。しかし、その問題意識については、明確に書かれていると思われる。

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