自己変革能力のある社会システムへの道標(抜粋)#1

2009.10.27 Tuesday 00:13
井庭 崇



そこで、数回にわたって、この論文のなかに書かれた「自己変革能力のある社会」のための提言の一部を抜粋したいと思う。(無気力の心理学などの話も面白いのだけれども、焦点を絞るために省きたいと思う。)以下は、論文のイントロ部分だ。




自己変革能力のある社会システムへの道標:複雑系と無気力の心理学の視点から

1.自己変革能力のある社会システムを目指して

硬直した巨大システムの中で、途方に暮れる無気力な人々――――これが現在の 日本を象徴する構図である。人々は、自分ではコントロールできないほど巨大化した システムを前に、時代遅れのシステムのルールを仕方なく受け入れ、その状況を変え ようとする気力や手段を喪失している。

かつてA・ハーシュマンは、社会や組織の変革の力として退出(exit)オプションと発言(voice)オプションの二つの重要性を述べた。退出オプションとは、ある政党を選択しなくなったり組織を脱退するという退出行為を通じて社会を変える方法である。一方、発言オプションとは、その政党や組織に対し直接意見を述べることによって社会を変える方法である。この観点から現在の日本を眺めてみると、退出オプションが若干機能しているだけで、発言オプションはほとんど機能していないことがわかる。この社会変革のための退出・発言オプションの選択ができない日本社会は、社会システムとして自己変革能力に欠けていると言わざるを得ない。

また、社会変革の中心を担う人間が無気力になっているのも、日本社会の自己変革が困難な理由の一つである。心理学の分野で研究されてきた無気力の獲得メカニズ ムを現代社会に当てはめてみると、人々を無気力にさせるメカニズムが社会の中に組み込まれていることがわかる。

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