「論点:国の未来像、総参加で創造」(1999)
2009.10.29 Thursday 01:22
井庭 崇
しかし現在、皆が共感し得る未来像をつくり出すことは容易なことではない。なぜなら、従来のように一部の代表者が未来像をつくるというトップダウン型の方法がうまく機能しなくなっているからである。
これまでの日本は、経済成長という強い方向性が共有されていたため、皆が共感し得る未来イメージをつくり出すことが可能であった。しかし価値観が多様化した現在では、社会全体がどのような状況で、人々が何を望んでいるのかということを一部の代表者だけで把握することは不可能である。私たちは未来像をつくるための新しいプロセスを考えなければならないのである。
ここで、未来像をつくることは創造的な行為であると捉(とら)えることが重要であろう。創造的思考のプロセスは「発散段階」と「収束段階」に分けることができるといわれる。未来像をつくる際にも、この二段階を明確に分離することが重要なのである。
発散段階とは、自由な発想で断片的なアイデアを持ち寄って多様性を生み出す段階であり、収束段階では多様なアイデアの中から現実的で有効だと思うものを絞り込んでいく。これまでは未来像をつくるプロセスに関して、発散段階が専門家の間だけで行われてきた。しかし価値観が多様化した現在は多様な視点を取り入れるために、一般の人々が発散段階に参加できるようにすべきなのである。
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