自己変革能力のある社会システムへの道標(抜粋)#3

2009.10.28 Wednesday 22:08
井庭 崇


「自己変革能力のある社会システムへの道標:複雑系と無気力の心理学の視点から」(井庭崇, 1998)からの抜粋第三弾。

この部分を読み直して、僕は10年前も社会的コラボレーションという話をしていたんだなぁ、と改めて気づいた。この頃よりも、かなり技術的・社会インフラ的な変化があった。社会形成のあり方も、もっと再考されてよいはずだと思う。



自己変革能力のある社会システムへの道標:複雑系と無気力の心理学の視点から
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6. (2)ボイス・アブソーバーの設立、およびポリシー・インキュベーターの役割強化

社会が自己変革を遂げるためには、どのように変革するかのビジョンがなければ ならない。しかし、日本社会にはビジョンの創造力が圧倒的に欠如している。この社 会的欠陥を修復するために、社会的なコラボレーションの仕組みを構築する必要があ る。そこで私は、「ボイス・アブソーバー」(声の吸収装置)という社会装置の設立、 および「ポリシー・インキュベーター」(政策孵化装置)という役割の強化を提案し たい。

ボイス・アブソーバーとは、人々が考えたシステム改善のアイディアなどを吸収 し、公表していく組織である。ここでいうボイスとは、人々のニーズや工夫、意見、 理論など、思考の断片のことである。ボイス・アブソーバーは、発言オプションのボ イスをアブソーブ(吸収)する目安箱のような存在といえる。

ボイス・アブソーバーが受け入れるボイスの内容は、政治システムや生活、欲し いサービスやビジネスに関する意見など、様々な領域をカバーする。例えば、「投票 をすると千円もらえるのならば人々はもっと投票に行くのではないか」、「○○駅周辺 は学生の一人暮らしが多いため、健康的な惣菜屋が欲しい」、「空缶・空き瓶を毎日捨 てられるようにして欲しい」などの身近なものから、国政に関するものまで、あらゆ るものが提案できる。このようにボイス・アブソーバーでは、会社員であれ、主婦であれ、学生であれ、それぞれの立場から出てきたアイディアを有効に活かすことができるのである。

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