「論点:国の未来像、総参加で創造」(1999)
2009.10.29 Thursday 01:22
井庭 崇
この現状を踏まえると、日本にはボトムアップ型の未来像創造の仕組みが不可欠である。その仕組みは一人ひとりの期待する未来像を吸い上げるもので、「イメージ・アブソーバー(イメージの吸収装置)」と呼ぶことができる。これは情報ネットワーク技術を用いて実現し得る目安箱であり、未来社会のイメージをあらゆる人々が提案できる。
これにより政策決定者は、いつでも人々の望む未来像を参照できるようになる。また一般の人々にとっては、自分の望む未来像を発言することによって、積極的に国や組織の未来像づくりに参加できるようになる。このイメージ・アブソーバーは、未来像の創造プロセスにおける発散段階として有用であり、皆が共感し得る未来像をつくることに役立つであろう。
小渕首相の施政演説によると、「二十一世紀のあるべき国の姿」について「有職者からなる懇談会」を早急に設置するとのことであるが、ぜひとも一般の人々からも未来像を吸収し参考にしてほしい。そしてそれを一時的なイベントとしてではなく、継続的に社会システムに組み込むことを期待したい。
先行きが不透明な今こそ、互いの視点や視野を補いながら想像力と創造力を駆使して、個々の政策の指針となる魅力的な未来像をつくりだしていきたいものである。
◇ ◇
いば・たかし 慶応大学大学院生。慶大政策・メディア研究科2年。共著に「複雑系入門」(NTT出版)。第4回読売論壇新人賞入賞。24歳。
(井庭 崇, 「[論点] 国の未来像、総参加で創造」, 読売新聞, 1999年2月9日朝刊 より引用)
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