創造システム理論の構想 #1

2009.12.23 Wednesday 10:59
井庭 崇


これからしばらくの間、「創造システム理論」(Creative System Theory)の構想について書いていきたいと思う。連載する内容は、以下の論文等をベースとして、翻訳と大幅な加筆・修正を加えたものである。

● Iba, T. (2009). "An Autopoietic Systems Theory for Creativity", The 1st Conference on Collaborative Innovation Networks (COINs).
● Iba, T. (2009-) Blog "Creative Systems Lab".
● 井庭 崇, 「自生的秩序の形成のための《メディア》デザイン ── パターン・ランゲージは何をどのように支援するのか?」, 『10+1 web site』, INAX Publishing.



創造システム理論の構想

本稿では、「創造性」(creativity)について、認知・心理学や社会的側面ではない新しい光の当て方で理解することを試みたい。ここで想定している「創造」とは、科学的探究、絵画・造形、文芸、音楽、建築、プロダクト・デザイン、演劇・パフォーマンス等、分野にかからわず、何かを生み出すこと(思考、行為、コミュニケーション)である。その創造の主体が一人であるのか、あるいは複数人であるのかは、ここでは二次的な問題に過ぎない。というのは、ここで考えたい問題は、「創造とはどのような事態なのか?」、「創造はいかにして可能となるのだろうか?」、そして「創造を支援することは、いかにして可能なのか?」ということだからである。

本稿で提唱する創造の理論は、オートポイエーシスのシステム理論にもとづいている。オートポイエーシス(autopoiesis)とは、「自分自身を生成する」という意味の造語で、システムの構成要素をそのシステム自身がつく出しているという事態を指している。この新しいシステム概念は、当初、「生命とは何か」を理解するために考えられたものであるが、その後、「社会とは何か」を理解するために一般化され、適用された。本稿では、この概念を「創造とは何か」を理解するために用いてみたい。つまり、創造をオートポイエティック・システムとして捉えるということである。そのような創造のシステムを、生命システムや社会システムという命名に倣い、「創造システム」(creative systems)と名づけることにしたい。

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