量子力学と社会思想:大澤真幸氏の新著『量子の社会哲学』

2010.10.15 Friday 22:37
井庭 崇


今日書店をぶらぶらしていたら、『量子の社会哲学』というタイトルの本が目にとまった。なんと、著者は社会学者 大澤真幸ではないか! 早速購入して帰ってきた。今月(しかもつい先日)出たばかりの本のようだ。

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『量子の社会哲学:革命は過去を救うと猫が言う』(大澤 真幸, 講談社, 2010)image[]


帯「量子力学と社会思想のミッシング・リンクを解く! 全知の神から無知の神へ!!」


まだ読んでいないので内容については書けないが、とにかく、量子的世界観が社会思想・社会哲学においても本格的に議論される時代が間もなく到来するという印象をもった。

物理学において古典力学から量子力学へのパラダイム・シフトが起きているにもかかわらず、僕らの日常感覚は社会科学はいまだに古典力学的なパラダイムから抜け出せていない。単なるメタファーとしてではなく、世界の根本的な捉え方の部分で、おそらく社会思想や社会科学に大きなインパクトをもつのではないか。僕自身、そう考えて5年ほどたった。

そのような思いで、実は、SFCでは数年前から「量子的世界観」という授業を担当していたりもする(医学博士の内藤泰宏先生との共担:量子的な捉え方で内藤さんが生命を語り、僕が社会を語る)。井庭研でも『世界が変わる現代物理学』image[](竹内 薫, ちくま新書, 2004)や、『The Quantum Society: Mind, Physics and a New Social Vision』image[](Danah Zohar, Ian Marshall, William Morrow & Co, 1994)などを輪読してきた(エントリ「量子力学における「コト」的世界観と、オートポイエーシス」「『社会を越える社会学』(ジョン・アーリ)」、および「一緒に学ぶ仲間とともに。」 参照)。前者は世界の捉え方をわかりやすく説明してくれているが、社会との関係については書かれていない。後者は、社会の捉え方に量子的な考え方を取り入れているが、メタファーとして適用しているというニュアンスが強い。量子(力学)的な捉え方で社会を捉え直そうという野心的な著作は、これまでほとんどないと言ってよい。

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