モバイル時代の英語力強化法:日本にいながらの環境構築(2)

2010.11.10 Wednesday 20:38
井庭 崇


1. 米国での研究生活で感じた自分の英語力の低さ

1 . 1 スピーキング

米国滞在中、何が最も難しかったかというと、それは何といってもスピーキングだろう。これは、相当厳しい。まず、言いたいことが文としての体をなしていない。構造が明らかに変、単語がきちんと選べていない、時勢はめちゃくちゃ、論理的でない。内容が知的であるとか、説得的であるとか、魅力的であるということ以前の問題である。言いたいことを言葉にしようとした途端、まるで幼稚園児のようなレベルになってしまう(いや、幼稚園児の方がよっぽど口が達者かもしれない)。旅行で使う英語や、「自分は何をしたい」とか「○○はどこ?」という会話にはあまり問題を感じなかったが、概念的な説明や論理的に主張をしようとすると、途端に破綻する。これまで国際学会で口頭発表をしたときの「出来た」感は、一体何だったのか?

結局のところ、その場で話をつくり出せるほど、自分のなかに英語の言い回しのストックがないということなのだ。英語表現におけるパターンといってもいい。話しをするときには、自分のなかにある表現のパターンを即興的に組み合わせながら、言いたいことを構成する必要がある。かつてWalter J. Ong [5] が論じたように、口承伝承の語り部は、物語のパターンをたくさん覚えていて、それらを即興的に組み合わせながら語っていた。英語で何かを話すときにも、まさにこの語りのパターンが必要なのだ。母語である日本語では自然に身に付いているパターンも、第二言語である英語ではそうはいかない。滞在中は、自分には英語でのオーラリティーが圧倒的に足りないと、日々痛感していた。

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