『芸術と政治をめぐる対話』(エンデ × ボイス)がかなり刺激的だった

2011.01.24 Monday 23:50
井庭 崇




そして、最近ますます興味が出てきた、主観/客観の二分法への疑問についても、エンデは次のように語る。

「純粋な客観性というニュートン流の真理の基準は、核物理学によって、疑問視されたわけです。……こんにちでは真理の概念は、かつて知恵と呼ばれていたものに、どんどん接近しているのです。つまり、自分で経験し、自分の内部にもっているものだけを、あなたは外部ででも認識できるのです。昔の自然科学は、事実を矛盾なく記述することを要求していましたが、こんにちでは、だれもそんなことを信じちゃいない。世界を客観的な世界と、主観的な世界に引き裂くというイデオロギーを、私たちはちょうど克服しようとしているところなんです。」(エンデ:p.85)

主観/客観の二分法をイデオロギーであると言い切ってしまうあたりが心地よい。

さらに、なぜ創造性の問題が今なお学問の世界で置き去りにされているのか、それについてもエンデは明快に語っている。

「自然科学の思考は、本質的に因果関係の論理にもとづいています。因果関係の論理がなければ、精確な自然科学は存在しない。さて、ところが人間は、一番人間的である場所で、つまり創造の場で、因果の鎖に縛られてはいません。縛られていたら、自由な創造がなくなります。だから創造は、自然科学の思考ではたいてい見落とされるわけです。因果の鎖とは縁がないので、証明できませんからね。」(エンデ:p.89)

僕の「創造システム理論」も、ここで指摘されているように、因果関係では捉えられないということが前提となっている。だからこそ僕は、オートポイエティックな???因果関係ではなく生産関係のネットワークの???システムとして創造を捉えたいと考えているわけだ。

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