創造性(クリエイティビティ)の新しい捉え方

2013.02.16 Saturday 08:26
井庭 崇



僕は、このような場合、研究成果としての社会的価値は下がると思うが、研究自体は創造的であったと考える。つまり、彼は研究のなかで、次々と発見(発想・気づき)をつないでいって、創造をしたのである。

その意味で、「創造的かどうか」ということを、社会的に新規であるか、価値があるかということを切り離して考えたいのだ。

そうだとすると、創造をどのように考えればよいのか。創造性は学問的にはふつう心理学で扱われる。創造的な思考は、認知・心理・意識の観点からどのように説明できるのかということが研究される。しかし、僕はそれとも違う道を行きたい。

というのは、意識・思考のなかにだけではなく、論理展開やコミュニケーションのズレのなかにも、創造的な発見の源があるからだ。人(の意識・思考)が創造的だと捉えるのではなく、プロセスそのものが創造的であるということを捉えたい。

そこで、創造というものを、ひとつの次元として切り出し、社会にも心理(思考)にも還元しないアプローチをとる。創造そのものの成り立ちを考え、そこで起きていることを直球で捉えたい、と思う。

創造のプロセスを考えるとき、何がその創造における「発見」になるのかというのは、その創造のプロセスのなかでの意味づけに過ぎないということに注目する。「アイデア」は、「アイデア」というものがどこかに在るわけではなく、その創造のコンテクストのなかで、ある考えが「アイデア」となるのである。

そう考えると、創造は発見の連鎖で成り立っているが、その発見は、創造のコンテクストに依存して定義されることになる。このような円環構造が創造にはある。そしてそれこそが本質的なのだ。

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