Creative Reading:『遊ぶヴィゴツキー』(ロイス・ホルツマン)

2014.12.27 Saturday 22:23
井庭 崇



実に興味深い指摘であり、そして、僕もとても共感する。

ヴィゴツキーによれば、人間科学としての心理学は、客観-主観の二元論にもとづくかぎり、発展は望めないのである。こうしてヴィゴツキーは、科学的探求の方法そのものを問うことになった(ここでいう方法は、個別の研究テクニックではなく、方法論的アプローチ全体を指している)。(p.12)

流通している科学では、方法とは適用され、結果を生み出す道具であるが、ヴィゴツキーはきわめてラディカルに、このような科学のパラダイムを捨て去るように提案した。流通科学では、方法と結果は一方向的であり、道具主義的で二元論であり、ニューマンと私は、これを【結果のための道具方法論】(tool for result methodology)と読んでいる(Newman & Holzman, 1993)。ヴィゴツキーは、質的に異なる方法概念を提唱した。これは適用される道具ではなく、道具も結果も同時に生み出す、持続的プロセスとしての活動(「探求」)である。道具と結果は、二元論的に分離されないが、しかし同じものでも一つのものでもない。むしろ、それらは、弁証法的な統合性/全体性/総体性の構成要素なのである。ヴィゴツキーが主張したのは、適用されるテクニックではなく、実践される方法論なのである。この概念の弁証法的関係性を捉えるために、ニューマンと私は、これを【道具と結果の方法論】(道具であると同時に結果 tool-and-result methodology)(Newman & Holzman, 1993)と呼んでいる。この新しい方法概念は、明らかに客観主義でも主観主義でもなく、二元論の囚われの外にある。そこにこの方法の可能性と力がある。(p.13-14)


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