Creative Reading:『絵本作家のアトリエ 3』(福音館書店母の友編集部)

2014.12.27 Saturday 22:32
井庭 崇


『絵本作家のアトリエ 3』は、絵本作家のアトリエを訪れ、その作家の辿ってきた道やこだわりについて聞き、それをアトリエの写真とともに紹介している本だ。

どの方の話も、それぞれ世界への好奇心と絵への思いにあふれていて面白かった。もの静かに絵本を書いている人もいれば、豪快な人もいた。

豪快といえば、五味太郎さんの話は特に面白かった。つくった絵本は400冊を超えるって、すごい。

五味さんは、そこに「おれがいる」という感覚、それこそが「絵本の仕事を続けている原動力」だという。そして、つくるプロセスについて、次のように語る。

よく、アイデアはどこから来るんですかって聞かれるけど、そんなもの、どこからも来ない。まず描いてみて、なんでこんなものを描くのだろう、と考える。その疑問をつなげていって、あ、ここにおれがいるな、と感じれば本になるし、なければやめちゃうだけ。


そして、何かから「影響を受ける」ときの共鳴について、ほんとその通りだ!と思うことを言葉にしれくれていた。

… 『影響』ってよく言うよね。『あなたの作風に影響を与えたのは?』『だれそれです。』みたいさ。でも、もともとその作品を受け止める資質がこっち側にもあったから、いいと思えるわけじゃない? 本でも絵本でも、自分の中に相手と同じ感覚がもともと準備されていたから、共感できると思うんだ。逆に言えば、その準備ができていない段階で出合っても、良さはわからない。


僕が「書こう」とするときに、本を読みまくるのもそういうことだ。本から何らかのネタを得ようとしているわけではない。そういうセコい話ではない。本に共鳴する自分のなかの思い・考えを探るために読む。自分が言葉にできずにいたことに似たようなことを考えている人の言葉を刺激として、自分の思い・考えにかたちを与えていく。そういうことをするために読んでいる。だから、その文献の ”正確な” 読解ではないし、網羅的に理解しようともしていない。自分に共鳴しない部分はさっと目を通すだけで通りすぎる。書くための読書というのは、僕はそういうものだと思っている。

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