Creative Reading:『遊ぶヴィゴツキー』(ロイス・ホルツマン)

2014.12.27 Saturday 22:23
井庭 崇



このことは、パターン・ランゲージの応用がまだ始まったばかりだから、未開拓でよく研究されていないから、そういうことになっているのだ、と多くの人は思うかもしれない。しかし、「生成的な」(generative)なことを大切にするパターン・ランゲージは、このような「方法」と「結果」を同時につくるようなプロセスの方が、より適していると言える。

よりよいパターン・ランゲージをつくりたければ、どうつくるのかという方法も同時につくる。パターン・ランゲージを使うというときには、どう使えばよいのかという方法も同時につくる。このことが本質的に重要なのである(もちろん、広く一般に普及させるためには、道具主義的に容易に「使える」ことも大切なので、そのあたりのバランスは戦略的に考えて実践することになるとは思う)。

在ること(being)と成ること(becoming)については、本書にも登場する。ホルツマンは、ヴィゴツキーを、心理学で定番となっている見方とは異なる視点で捉えていて、それを次のように説明する。

私をヴィゴツキーの仕事を……心の理論ではなく、【成ることの理論】(theory of becoming)と理解している。彼の発達概念の構想に関するかぎり、それは全体における質的転換に関わっていた。それは存在の状態というよりも生成に関わるものであった。活動によって、心理学は「であるもの」の研究から「生成しつつあるもの」(「であるもの」をもたらす)の研究に移行する基礎が与えられる。人間発達の弁証法的概念(生成の活動)とそれを研究する方法論(道具と結果)を創造しようとするヴィゴツキーの企ては、人間発達の問題の枠組みを、それが本質的にもつパラドクスを引き受けるものへと変更した。すなわち、どのようにしてい、あるものがそれであると同時に、それでないものでもあるのかというパラドクスである。(p.25)


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