Creative Reading:『遊ぶヴィゴツキー』(ロイス・ホルツマン)

2014.12.27 Saturday 22:23
井庭 崇



このあたりから、他者との関係、とくに協働的な関わりが強調されることになる。

「ともに実践する集合形態」としてのzpdというアイディアは、ヴィゴツキーの概念の理論的重要性と実践可能性を大いに拡大した。学習が先導する発達は【集合的に創造される】とヴィゴツキーは述べているのだ。これはzpdを時空間的な実体というよりもプロセスとして、現実の領域や空間、距離というよりも活動として理解するとき、より有用になると示唆している。… 私にとってzpdは、道具と結果の弁証法的活動であり、ゾーン(環境)を作ることであると同時に、創造されるものでもある(学習が先導する発達)。(p.43)

zpdの集合的な創造は、人間生活の弁証法(「在ること」と「成ること」の弁証法)を示している。それは、人びととつながることが、やり方をまだ知らないことも可能にし、自分たちにできること以上のことが可能になるようにすることを意味する。(p.44)


これらは、ヴィゴツキーの幼児や障害児の例や、ニューマンやホルツマンのソーシャルセラピーの例でもみられるという。

どちらの場合も、普通の人びとは環境を作り上げる創造的な方法論を使って、自分自身との、仲間との(モノ的な、また心理的な)道具との、そして世界の事物との関係性を組織化し再組織化する。彼らは、【生成】を可能にする「領域」を構成するのだ。(p.44)


パターン・ランゲージをつくるということは、他の人とともに集合的に、自分たちの環境(生成を可能にする領域)をつくるということにほかならない。それは、人間の発達に関わる。各人がもっていた理想の状態(質)の断片をもちより、ひとつの(仮想の)理想の状態を構成し、それに向かって成長する。フューチャー・ランゲージの場合も同様に、自分たちのなかに断片的になった理想の未来を可視化し、それに向かってともに成長することが含意されている。

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