Creative Reading:『遊ぶヴィゴツキー』(ロイス・ホルツマン)

2014.12.27 Saturday 22:23
井庭 崇



ところで、本書で紹介されるグループセラピーの考察でとても興味深い部分があった。というのは、僕がふだん行っている創造的コラボレーションでも同じことが起きているからだ。パターン・ランゲージをつくるプロジェクトにおいても同じことが起きているのだ。

… 20分ほど過ぎると、会話の焦点は変化し、グループは、彼女の使うことばが何を意味するのかを探求し始めた(…)。そして、そのことを語ることがどういうことなのかを探求した(…)。彼らの語り合いの特定化された文脈のなかで特定の語やフレーズを探求することで、グループは「意味作り」を開始したのだ。真実がどうかを語ことを止めて、グループは一緒に話し合いをするという活動を探求し始めたのだ。ここで活動は、真実を発見することから意味の創造へと大きく変わった。集合的に真実を確認するというよりも、グループにとっての新しい意味の感覚を生み出すことに変化したのだった。(p.63)


パターン・ランゲージをつくっているとき、僕らは最初、自分たちの経験やインタビューで得た情報をもとにパターンを書いていく。でもあるときから(かなり後半)、単に事実を書くということを超えて、まさに「意味をつくる」感覚となる仕上げの段階がある。これは、井庭研メンバーが「先生が魔法をかけた」という時期に僕がやっていることだと思う。自分たちの経験やインタビューで出てきた、各人に帰属するバラバラのパターンを、ひとつの理想的な状態(質)を生み出す一連のパターン体系とするために、パターンの軸足を向こう側(理想的な状態=質が実現されたという想定上の世界)へと移し、それが成り立つように「意味をつくる」。最初から「意味をつくろう」としてしまっては、経験や語りの断片から大切なことを「聴く」ことができないが、最後までそれらの断片に寄り添っていると、体系を欠いたバラバラなものができてしまう。だから、あるときから、軸足を移して、「意味をつくる」ことに注力することが必要となる。

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