Creative Reading:『絵本作家のアトリエ 3』(福音館書店母の友編集部)

2014.12.27 Saturday 22:32
井庭 崇



そこを、そういう気持ちもない人を説得したり、その気にさせたり、ということは、どこか歪んでいるのかもしれない。

いろんな考え方、いろんな表現があって、それらがたくさん織り合わさって世界ができている。そういう方が幸せな世界なのかもしれない。

だからこそ、次のような気持ちなのだろう。

絵本をずっと作ってきたけど、『幼い子どもに本を与えよう』なんてことには興味がない。本との出合いって個人個人の人生における事件だと思うんだ。その出合いはお見合いみたいなものじゃなくて、もっとドラマチックなものだと思うんだよ。

おれはね、単に、ガキのころの、あの自由な魂をもっとふくらましてやればいいと思ってるんだ。人間には生まれついての『生きていく能力』が内在していると思う。もう持っているのであって、後から与えられるものじゃない。でも、その力は成長する過程で薄れていく。だからその力を守るような、くじけそうなときに支えになるような、そういう本を準備しておいてやりたいなと思うんだよ。それが俺の野望。


与えるのではなく、準備して、手に取れるところにそっと置いておく。本を読んで取り入れるのではなく、自分のなかにあるけれども弱ってしまった力を共鳴させて強めることを支援する。

パターン・ランゲージの役割もそこにあると、僕は思っている。経験がまったくないものは、パターンを読んでも理解できない。頭で理解できても、自分のものにならない(しかし、その視点だけはもつことができるので、未経験のパターンを知ることは、別の効果があるのであるが)。

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