Creative Reading:『知的生産の技術』(梅棹忠夫)

2015.01.03 Saturday 23:45
井庭 崇



これはその通りであり、だからこそ、僕らは学びのパターンを共有するための「ラーニング・パターン」をつくった。そして、もっと広く捉えると、人間行為のパターン・ランゲージ(パターン・ランゲージ3.0)というのは、本書でいうような「知的生産の技術」を共有するための方法であると言うこともできる。

そして、梅棹は言う。

この本は、いわゆるハウ・ツーものではない。この本をよんで、たちまち知的生産の技術がマスターできる、などとかんがえてもらっては、こまる。研究のしかたや、勉強のコツがかいてある、とおもわれてもこまる。そういうことは、自分でかんがえてください。この本の役わりは、議論のタネをまいて、刺戟剤を提供するだけである。(p.20)

知的生産の技術について、いちばん【かんじん】な点はなにかといえば、おそらくは、それについて、いろいろとかんがえてみること、そして、それを実行してみることだろう。たえざる自己変革と自己訓練が必要なのである。(p.20)


パターン・ランゲージも読んだだけでそれをマスターしたことにはならない。そのパターンをどうしたら自分で実践できるのかを考え、それを実際に試し、そこから学び、自分なりにチューニングしていく。そういうことが不可欠である。パターン・ランゲージの使い方にも秘訣があり、習熟が必要となるのである。

そうなると、先に引用した「知識はおしえるけれど、知識の獲得のしかたは、あまりおしえてくれない」という話は、そこで話を終えることはできないということに気づく。「知識の獲得のしかたをどのように獲得するのか」という問題は未解決のままだからだ。そのとき「自己変革と自己訓練が必要」だというのは正しいが、本当は、話をそこで終わることはできないだろう。ここは、僕らに残された宿題だと感じる。

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