Creative Reading:『天才たちの日課』(メイソン・カリー)

2015.01.05 Monday 17:31
井庭 崇



例えば黒人女性で初めてノーベル文学賞を受賞したトニ・モリソンは、最初は夜に書いていたが、後に「日が暮れるとあまり頭がまわらなくて、いいアイデアも思いつかない」ために、早朝書くことに切り替えたという。

作家はみな工夫して、自分がつながりたい場所へ近づこうとする。自分がメッセンジャーになれる場所、執筆という神秘的なプロセスにたずさわることができる場所に。私の場合、太陽の光がそのプロセスの開始のシグナルなの。その光のなかにいることじゃなくて、光が届く前にそこにいること。それでスイッチが入るの。ある意味でね (p.100)

朝早く起きて書くということがこういうことなのだと考えると、なかなか素敵だ。


本書で取り上げられている人たちのなかには、インスピレーションを信じている人は思いのほか少ない。その理由を、チャック・クロースが端的に述べてくれている。「インスピレーションが湧いたら描くというのはアマチュアの考えで、僕らプロはただ時間になったら仕事に取りかかるだけ」(p.103)だと。

その代わり、多くの人が、日々の生活における習慣を重視していた。ヘンリー・ミラーは次のように語る。

優れた洞察力が働く瞬間瞬間を維持するには、厳しく自己管理をして、規律ある生活を送らなければならない (p.86)


そのような毎日の繰り返しの重要性について、村上春樹は「繰り返すこと自体が重要になってくるんです。一種の催眠状態というか、自分に催眠術をかけて、より深い精神状態にもっていく」(p.97)のだと言う。

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