パターン・ランゲージを編み上げることは、小説を書くことに似ている。

2015.01.11 Sunday 22:37
井庭 崇



そのとき、自然な感じというのは何かというと、そのパターンの「奥」にある世界で出来事がうまく流れるかどうか、ということである。パターン・ランゲージというものは、読者がパターンを読んで、自分の世界(生活)で実践してみることが期待されてつくられている。つまり、読者がパターンの冊子を前から読んでいくなかで、自分の世界の流れに照らして、イメージしやすいように書かれなければならない。もちろん、読者は多様な状況のなかでパターンを適用するので、その状況や流れを一意には決めることができない。そうであったとしても、より多くの人が自然な流れであると感じる並べ方はあるのであって、それを模索するわけである。

パターンの「奥」というのは、僕がパターンの順番を考えているときの感覚は、パターンの記述の「奥」に照射された世界での流れをつかもうとしていることから、そう表現した。ここでの「奥」の世界では、おぼろげながら登場人物がいて、その人たちが、そのパターンを読んでいたり、実践していたりする。『旅のことば』であれば、認知症のご本人や、家族が、そこには登場する。そして、日々の生活をしている状況を思い描く。

パターンの「奥」の世界の登場人物たちは、僕の意図を超えて、自由に動き回っている。そして、このパターンを読んだとき、どう感じるだろうか、どういう行動をとるだろうか、このパターンを実践した人が、次にこのパターンを実践しているのというのは、自然な流れだろうか。このパターンの次にこのパターンを読んだとして、まさにこれが必要だと思うだろうか。そういうことを何度も何度もシミュレーションする。これは、まさにパターンの奥にある世界の「物語」をつくり動かしているということである。

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