Creative Reading:『小説の自由』(保坂 和志)

2015.01.17 Saturday 00:03
井庭 崇



小説を書くことは、自分がいま書いている小説を注意深く読むことなのだ。小説家はどんな読者よりも注意深く、自分がいま書いている小説を読んでいる。(p.191)

しかも、「読み直す」ということは、実際にすでに書いた部分の文章を読んでいるだけでなく、その内容・展開を何度も「読む」。

小説家には、自分がいま書いている小説のことだけが頭にある。だから仮に小説家Aが一日二時間しか机に向かわないとしても、小説家Bが二日に一度しか机に向かわないとしても、小説家は小説を書いているかぎり、いま書いている小説のことを考え続けている。机から離れていても最近何日間かで書いた分 ――― だいたい二〇〜三〇枚だろうか ――― の情景や会話が頭の中にあって、それゆえ小説家は自分が書いた原稿を【繰り返し読んでいる】。(p.192)

何度もその世界がリピートされる。絶えずその世界を何度も何度も頭のなかで「読み直す」。これは、パターン・ランゲージを編み上げているときに、僕が必ずやっていることでもある。

私が小説家であることを知ると、純朴な人たちは「自分が考えていることを人に伝わるように書くって難しいですよね」と言うのだけれど、自分が考えていることがすでに形となっているのなら書くことはたいして難しくない。そうではなくて、「自分が考えようとしていることが、どういうことなのか自分自身でもよくわかっていない」ことを書くから、書くことは難しい。(p.358)


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