Creative Reading:『小説の誕生』(保坂 和志)

2015.01.17 Saturday 18:06
井庭 崇


前回に続き、保坂和志さんの「小説をめぐって」の三部作の二作目にあたる『小説の誕生』(保坂 和志, 中公文庫, 中央公論新社, 2011)image[]から気になる部分を抜き出して考えたい。

image[Hosaka2.jpg]『小説の誕生』(保坂 和志, 中公文庫, 中央公論新社, 2011)image[]


本書でも、「小説的思考とは何か? 小説が生成する瞬間とはどういうものか? 小説的に世界を考えるとどうなるのか?」ということが問われている。

評論的思考は俯瞰し一望するタイプのものだけれど、小説的思考は森の奥へ奥へと勇気を持って突き進むものだ。その先に何があるのか?なんて関係ない。突き進むという行為自体に意味がある。というか、小説を書くとはひたすら突き進む行為そのもので、それは人生であり、この世界に生きることに等しい。人生や世界は決してその外に出て俯瞰することはできない。(p.14)

興味深いのは、この小説論自体が、小説的に奥へ奥へと進むように書かれているということだ。

小説論は評論でなく小説の変種だから、私は毎回、最初の数行を書いたらその運動に任せて、考えを前に進めることだけを実践した。(p.4)


[9] >>
-
-


<< Creative Reading:『小説の自由』(保坂 和志)
Creative Reading:『小説、世界の奏でる音楽』(保坂 和志) >>
[0] [top]


[Serene Bach 2.20R]