Creative Reading:『小説の自由』(保坂 和志)

2015.01.17 Saturday 00:03
井庭 崇


パターン・ランゲージをつくるのが大変なのも同じ理由だ。個々のパターンが何を言うべきかが、よくわかっていないからこそ、それを書くことで理解しようとしている。そして、パターン・ランゲージ全体で何を表そうとしているのかも、つくっている段階ではよくわからない。よくわからないからこそ、何度も読み直し、何度も書き直すなかで、それをつかもうと努力するのである。

「書く」というのは「文字を使って書く」ことだ。文字というのは人間の外にあって人間と別の原理によって動く体系であって、火を使ったり、道具を製作して使ったり、楽器を演奏したり、動物を飼育したり、植物を育てたり、数学を使ったり、三段論法などの論理的思考法を持ったり、家を建てたり、船で海に乗り出したり、車輪を持ったり、水車という動力を使うようになったり、蒸気機関を発明したり、電話を発明したり、パソコンを使うようになったりするのと同じように、人間と別の原理によって動くものによって人間もまた動かされることで、それらひとつひとつを自分のものとするたびに人間はそれ以前の人間とは別の思考の仕方や世界との別の関わり方をするようになった。(p.359)

この「人間と別の原理で動く」ということが大切だ。

考えることは文字なしで頭の中だけでもできる。しかし頭の中だけでは論旨をゆっくりと進めることしかできない。頭の中だけの考える作業としてたぶん最も向いているのは、要素を記憶しておいて、それらが思わぬ結合をして、大転換でも小さな転換でもいいが、とにかく“転換”をともなったインスピレーションが生まれるのを待つことだ。

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