Creative Reading:『小説、世界の奏でる音楽』(保坂 和志)

2015.01.17 Saturday 22:11
井庭 崇


今回は、保坂和志さんの「小説をめぐって」の三部作の最終巻である『小説、世界の奏でる音楽』(保坂 和志, 中公文庫, 中央公論新社, 2012)image[]を取り上げたい。

image[Hosaka3.jpg]『小説、世界の奏でる音楽』(保坂 和志, 中公文庫, 中央公論新社, 2012)image[]


この三部作を通じて、小説家・小島信夫さんの話がたくさん出てくるのであるが、次のエピソードで語られていることは、実に興味深い。

そのとき話がはじまってすぐに私がちょうどそのときに読んでいたメルロ=ポンティの『見えるものと見えないもの』のページを開いて、
「ソナタ奏者の演奏がソナタたりえるのはソナタに奉仕しているからだ。」
という意味のことが書いてある箇所を小島さんに見せて、
「小島先生の小説が小説たりえているのは、先生が小説に奉仕しているからなんだと思う。」
と言ったら、
「そんなことを誰の前でも軽々しく言ったらいけない。みんな小説を自分一人の力で書いていると思っているんだから。」
と小島さんが答えた (p.121)

この部分を読んで、もしかしたら僕のつくるパターン・ランゲージがパターン・ランゲージたりえるのは、パターン・ランゲージに奉仕しているから、と言えるのではないか、と感じた。そして、よいパターン・ランゲージを書けないで悩んでいる人は、もしかしたら、自分がつくっているものをどうするかに頭を悩ませているばかりで、パターン・ランゲージというもの・方法に奉仕していないからかもしれない。

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