Creative Reading:『小説の誕生』(保坂 和志)

2015.01.17 Saturday 18:06
井庭 崇


そのような小説的な書き方で、小説について考えているのが、この『小説の誕生』という本、そして、この「小説をめぐって」の三部作なのである。このような再帰的なかたちの取り組みは、まさに僕らがパターン・ランゲージをつくるためのパターン・ランゲージをつくっているのと同じような構造になっている。

前回取り上げた『小説の自由』でも書かれていたことだが、文体は文章の表面的な特徴を言うのではなく、それを生み出す奥にあるものである。

小説における文体とは書かれる要素の種類と量とその順番などのことであって、センテンスの長-短、言葉使いの硬-軟などの表面的なことではない。それら表面的なことだけにとらわれる文体観は、小説を形式と内容に分ける考え方に基づいた発想なのだが、小説においては形式と内容という二分法は意味がない。表面的なものだけをみて文体と考える発想は詩から移入されたものだろう。散文は韻文ではない。散文は韻文と別のメカニズムによって作られていくこのだから、小説は散文としての独自の意識を持つ必要がある。小説にとって必要なのはひたすら散文という意識だけなのではないかと私は思う。(p.34)

この詩の捉え方が、詩人の側から見てどう思うのかは僕はわからないが、「形式」と「内容」に分けるという発想がそもそも違うという指摘は興味深い。(小説・散文における)文体というのはそれらの二分法的な区分では捉えられないというわけである。そして、散文であるパターン・ランゲージの文章もまた、「形式」と「内容」は不可分だということになる。

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