Creative Reading:『レイモンド・カーヴァー:作家としての人生』

2015.01.19 Monday 11:00
井庭 崇



PLoPにおけるライターズ・ワークショップは、ポジティブで建設的なコメントをし合うという場である。特徴的なのは、著者は何も話してはならず、その場では沈黙しなければならない。モデレーターのゆるやかな進行のなかで、著者以外の参加者たちがそのパターンや論文をよりよくするために考え、話し合う。著者はそれを聞きながら、誤解されていることも含めて受け入れなければならない。というのは、その誤解を生んだのは、自分の書いた文章だからである。その誤解が生まれる状況を目の当たりにすることで、著者はその部分を書き直さなければならないということを知るのである。

おそらく、このことは、フリーカルチャーやオープンソース文化が生まれるようなソフトウェア分野の土壌に合っていた。フラットでフランクに語り合い、お互いに相手のためにコメントし合うというよい雰囲気がある。これが、20年間、PLoPで行われてきたタイプのライターズ・ワークショプである。

これに対して、昨年、Richard Gabrielが、「20年経ったことだし、そろそろ違うやり方も試してみてよい頃だと思う」と言い、違うタイプのライターズ・ワークショップをやり始めた(僕はそのワークショップの参加者だった)。違うタイプといっても、別の新しいやり方というわけではなく、創作の分野で行われてきたやり方により近いやり方である。それは、教師が、学生たちに学んでほしいことを抱きながら、学生たちの作品を使ってみんなで議論するというものである。これまでのモデレーターは(原則的には)より中立的で、参加者とかなりフラットな関係があった。これに対し、Richardが創作分野でもともとやられていたワークショップとして始めたものは、モデレーターがかなり議論の流れをつくり、参加者がこの論文やパターンで考え・議論することの水路付けを行う。必要に応じて著者も質問を受けたり、意見を述べたり、一緒に議論したりする。終わってみると、フラット型のライターズ・ワークショップよりも、深い議論ができ、著者としても参加者としても得るものも多かった。

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