Creative Reading:『レイモンド・カーヴァー:作家としての人生』

2015.01.19 Monday 11:00
井庭 崇



月曜に行われるこの会をドハーティはいつも心待ちにしていたという。「その日は、本物の作家のような気分になれるから、みんな気合いが入っていたよ。ほかの日は、実際に文章を書かなきゃいけないからね」。学生たちが事前にタイプライターで打った短編や詩を教授に提出すると、彼らにはよくわからないプロセスによって教授が作品を選び、学部の秘書にタイプライターで打たせる。その後、選ばれた作品は、青焼き機で複写され、まだ湿って現像液のにおいがする紙の束が、ホッチキスでとめた「ワークシート」と呼ばれる冊子になって学生に配られる。それからの数日間、学生たちはワークシートを読み、それぞれの作品の著者は誰だろうと考える。そして、必然的に、自分の作品と比べて、どちらが優れているだろうと自問自答することになる。また、どうすれば作品を改善できるかについて考える。配られたのが自分の作品だった場合は、ほかの学生がそれを気に入るだろうか、自分の作品だと気づくだろうかと思いを巡らせる。(p.141)

これは自分に才能があると自信を持っている者にも、不安を感じている者にもきつい環境だったようだ。

作家のジェイ・ウィリアムズは、そこは「毒蛇の巣窟」であったと語っている。

そこで彼女は、「自信がなく、麻痺した状態」で学生時代の二年間を過ごしたという。それもすべて、エングルが意図した状況だった。「私たちは、学生を叩き、または説得し、震え上がらせて、駆け出しの作家が自分の作品に対して抱く幻想を振り払う。そこから知恵というものが生まれるからだ」とエングルは語っている。(p.141)


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