Creative Reading:『レイモンド・カーヴァー:作家としての人生』

2015.01.19 Monday 11:00
井庭 崇



これまでも、僕は、作品をつくる人が作品につくらされているという関係になるという話を、宮崎駿の言葉などを引用しながら語ってきたが、それはひとつひとつの作品に対してのことであった。上述のマイケルズの言葉は、それを超える範囲においても、同様のことが言えるのだ、ということである。これはすごい。

レイモンド・カーヴァーは、のちにアイオワでワークショップをもつことになるのだけれども、そのときの学生ダン・ドメネクは、「レイが書くことを愛していることが、僕には魅力的だった」(p.386)と語っている。そして、「書くことについて語るときは、彼は情熱的で、独断的だった」(p.387)と。この部分は、自分の経験に照らしてもよくわかる。


作品集『ベスト・アメリカン・ショート・ストーリーズ』の前書きで、カーヴァーは「幸運」について語っている。

ごくまれに、雷が落ちる。<中略>雷に打たれるのは、あなたの友人であるか、かつて友人だった男性または女性かもしれない。その人は酒を飲み過ぎているかもしれないし、まったく飲まないかもしれない。その人は、あなたといっしょに出席したパーティーのあとで、誰かの奥さんと、あるいは旦那さんと、あるいは姉か妹と姿を消したかもしれない。教室の後ろのほうに座って、何かについてひとことも意見を述べなかった若い作家かもしれない。とろいやつだ、とあなたは思っただろう。その作家がトップテンの候補者に選ばれる日が来るとは、誰も想像しなかっただろう。(p.653)


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