日本語のパターンにおける内言的な書き方へのこだわり

2016.09.14 Wednesday 13:14
井庭 崇


僕がパターン・ランゲージのパターンを仕上げるときに、こだわって意図的にしていることがある。それは、主語(人称代名詞)をうまく抜いて、内言(inner speech)的に読めるようにするということである。

これは日本語だから成し得ることであり、日本のなかでもそのことにこだわってパターンを書いている人にはこれまでに会ったことはない。

例えば、僕らがつくったパターン・ランゲージ『旅のことば』の「なじみの居場所」のSolutionは、次のものである。

自分ひとりで行けて、家族も知っている行きつけの場所をつくります。すでにそのようなお気に入りの場所があれば、そこを自分の《なじみの居場所》だと家族に伝えておきます。まだない場合には、家の近くの喫茶店や小さな美術館など、居心地のよさそうな場所を探すことからはじめます。家族や友人と一緒に探すと安心です。よさそうな場所が見つかったら、その場にいる店員さんや常連さんたちに、ひとこと挨拶をしておくと早くなじむことができるでしょう。


「あなた」「私」というような言葉は使われていないのがわかるだろう。「自分ひとりで行けて、家族も知っている行きつけの場所をつくります。」というのが、「誰が」なのかは、意図的に書いていないのである。そうすることで、「うまく実践している人は」と読むこともできるし、「自分は(これから)」と読むこともできる。こう書いてあることで、自分の内言(心のなかの言葉)のように、ここに書かれた言葉を内側から読むことができるようになる。

ちなみに、このパターンの英語版のSolutionは、次のようになる。

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