Vision Cube: 未来の社会をかたちづくる「新しい学問」をつくる
2017.06.20 Tuesday 23:29
井庭 崇
まず最初に、(1) Academic-oriented ←→ Issue-oriented の軸から見ていこう。「学問体系の発展」に重心が置かれているのか、世の中のイシューからスタートして「実際の問題解決」が目的とされているのか、ということを表す軸である。 Issue-orientedというのは、現実問題の解決ということでSFCでもずっと言われてきたことである。多くの場合、いくつかの個別科学分野(ディシプリン)の協力によって「学際的」(Inter-disciplinary)に取り組まれることになる。Academic-orientedに行くほど、学問体系の発展のために研究がなされ、Issue-orientedに行くほど、問題を解決するということが優先される、という軸である。
次の軸は、(2) 狭義の“科学” ←→ 事実/価値を不可分とする新しい学問 である。「狭義の“科学”」とは、一般に広くイメージされるいわゆる「科学」(サイエンス)のことだ。つまり、何らかの"客観的"なデータを用いて実証していくことで、何が「真」(true)であるかを明確化するという、近代的な科学観である。これに対し、「事実/価値を不可分とする新しい学問」とは、事実(真)と価値(善)は不可分である = 独立に決めることはできない、という立場をとる。
近代の科学観しか知らなければ、奇妙に見える「事実/価値を不可分」という主張は、長い知の歴史や哲学的潮流から見れば、それほどおかしなことを言っているわけではない。もちろん、近代化以前に戻ろうという話ではない。狭く取り過ぎていた学問の境界を引き直そう、という話である。哲学におけるプラグマティズム(例えば、H・パトナム『事実/価値二分法の崩壊』)や、政策学の価値判断の不可分性の話に通じる。
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