書籍販売市場における隠れた法則性
2008.04.21 Monday 23:51
井庭 崇
image[MarketPowerLaw-Linear200.jpg]image[MarketPowerLaw-Log200.jpg]以前の僕らの研究(※)で、全国に分布する2,000以上の書店のPOS(販売時点情報管理)システムの実データを解析したところ、販売冊数-順位の関係が、月間・年間のどちらの場合も「べき乗分布」になっていることがわかった。
例えば、2005年度における販売冊数と順位の関係を示すと、左図のようになる。縦軸が、販売冊数の割合(そのタイトルの販売冊数を書籍全体の販売冊数で割ったもの)、横軸が順位である。つまり、グラフの左から右に向かって、販売冊数が多いタイトル(銘柄)から低いタイトルまでが並んでいる。もし販売冊数が同じものがあっても、同位とはせず、順に順位を振っていく。例えば、まったく同じ販売冊数のタイトルが2つあったとしても、100位が2つあるというふうにするのではなく、100位と101位に分けてプロットする。ここで示したグラフは、上が線形グラフ、下が両対数グラフである。上の線形グラフをみると、「ロングテール」である(「しっぽ」の部分が長い)ことがよくわかると思う。
image[LinearLogGraph200.jpg]ここで、「線形グラフ」と「両対数グラフ」について、少し解説しておくことにしよう。線形グラフ(linear graph)というのは、一般的によく用いられている普通のグラフだ。線形グラフでは、目盛りごとに100、200、300というような感じで「線形」に数が増えていく。両対数グラフ(double logarithmic graph)では、目盛が増えると、1、10、100、1000というように対応する値が増えていくグラフである。このグラフでは、実は10の「何乗か」という指数の部分が、0、1、2、3と増えているのだ。べき乗分布のデータは、線形グラフでは、軸に限りなく近くて、その特徴が理解できないため、両対数グラフで見ることが多い。べき乗分布は、両対数グラフでは直線上に並んでプロットされる。
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