書籍販売市場における隠れた法則性

2008.04.21 Monday 23:51
井庭 崇



販売量-順位分布のべき乗が示しているのは、「破格に売れているタイトルがごく稀にあり,ほとんど多くのタイトルはあまり売れていない」という事実である。テール部分が近似線から乖離しているのは、書店や棚の規模が有限であるために生じる「カットオフ」だと考えられる。書籍販売市場がウィナー・テイク・オール市場だということは、以前から知られていたが、この分析結果の面白い点は、売れ行きの規模に関係なく、順位が下がれば販売量が規則正しく減少していくということである。べき乗分布は、単に「20:80の法則」(ニッパチの法則)が示しているような「ほんの一部のタイトル(銘柄)がとても売れている」ということだけを示しているのではない。また、ロングテール論がいうような「テールが長く、集めるとかなりの量になる」ということだけを示しているわけでもない。べき乗分布が示しているのは、それら二つの特徴を含みながら、最上位や最下位の間に存在するすべての書籍が、べき乗則という法則に従っているという驚くべき事実なのだ。これは、本当に不思議なことだ。

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