井庭研 新規メンバー募集「創造実践学研究:ナチュラルにクリエイティブに生きる未来へ」
2022.07.12 Tuesday 18:15
井庭 崇
こうして、地上と地下のそれぞれの作用について見てきました。それぞれ異なる働きをしていて、どちらも創造的な実践(思考・行為)をするためには不可欠です。しかし、これらがバラバラにあるだけでは、その力はフルには発揮されません。地下で生み出される内なる力が、地上での動作にうまく連結されなければなりません。その要(かなめ)になるのが、(3) 生成の型です。
生成の型は、その種の実践における「押さえどころ」のことです。生成の型を身につけることで、地下の内発的な力を地上のパフォーマンスにうまく接続することができるようになります。ここで言う「型」というのは、武道や芸道で身につける「型」の意味での「型」です。それは、多様な生み出し方に共通する(いつも踏まえるべき)不変の押さえどころの意味です。実践者は自由に振る舞っているにもかかわらず、その生成の「型」を押さえているので、質の高いパフォーマンスが可能になります。これが、武道や芸道の「型」の意味です。
“型”という言葉には、もう一つ、別の意味があり、日常的にはそちらの方が想起されやすいでしょう。型のもう一つの意味とは、複製のための「鋳型」(いがた)のことです。たい焼きのプレートのようなものです。それは、同じ形のものをいくつも複製するために用いられます。「型抜きをする」「型にはめる」「型にはまる」という言い方で言われるときの“型”は、こちらの意味です。それは、テンプレートであり、鋳型のことです。これは、武道や芸道で言われる「型」とは、別物です。武道や芸道で言われる「型」には、同じものを複製するという意味やニュアンスはありません。生み出し方も結果も多様になるようになるからです。そこで、ここでは、「複製の鋳型」に対して、「生成の型」という言葉で表現しました。自然な深い創造を可能とする3つ目のポイントは、「生成の型」を踏まえるということです。
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