『音楽を「考える」』(茂木・江村)

2008.07.07 Monday 12:57
井庭 崇


image[Book-MogiEmura.jpg] (茂木健一郎, 江村哲二, ちくまプリマー新書, 筑摩書房, 2007)

この本は、江村哲二さんというクラシックの作曲家と、茂木さんの対談の本だ。茂木さんもさることながら、江村さんの話が非常におもしろい。

「なぜ音楽が頭の中で響き渡るのか、そもそも空気の振動としての音ではない、脳内にあるいわば仮想としての響きを聴いているということは一体どういうことなのか。」(p.10)

江村さんがそんなことを考えているときに、茂木さんの『脳とクオリア』を読んで、まさに同じことを考えている科学者がいる!と興奮したそうだ。そして今回、10年越しで実現したというのが、この本の対談だ。江村さんは、音大ではなく、工学部出身というユニークな作曲家。「サイエンスは大学で、音楽は独学で、両方やっていました」(p.15)という。そのような経歴の持ち主であるからか、作曲行為や音楽について語る際に、内と外の両方の視点を併せ持っている感じがして、とても興味深い。そして、茂木さんもそれをうまく引き出している。最近イチオシの一冊なので、ぜひ読んでみてほしい。

この対談では、創造性、作曲、クラシック音楽、科学、教育など、さまざまな話題が取り上げられているが、ここで紹介したいのは、「創造」の本質についての話だ。この本では全体を通じて、創造とは、自分の内なるものを「聴く」ということ、そして「傷つき」ながら生み出すということだ、と語られている。

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