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2005年04月21日

Orlikowski and Baroudi (1991) 

【要旨】
 この論文では情報システム現象の研究における、現状において限定されているアプローチの哲学的視点を指摘した上でより多様なアプローチの必要性を主張している。
現状分析の過程としては、1983年から1988年まで出版された155の情報ンシステム研究論文を調査し、いくつかの指標による分類を行っているが、特にChuaの認識論によって、「実証主義」「解釈主義」「批判主義」研究の3つに分類した。結果、ほとんど(96.8%が「実証主義」に拠っている事が明らかになった。
今日の情報システム研究は、情報技術のみならずそれに係わる個人、および組織の間の関係を問わなければならず、以上の特性を踏まえると実証主義のみでは現実の要請に答えられないとの問題意識にのっとって、著者は、社会科学の様々なタイプに基礎付けられた哲学的仮定の多様性を認識し取り入れることが有効であり重要だと主張し、具体的には「実証主義」の他に「解釈主義」「批判主義」を方法的基礎に加えることを提案する。「実証主義」が発生事象は人間的要因とは分離して考えられ、客観性を保つことを重視して事象を観測するのに対し、「解釈主義」は、社会は外側のものではなく、人間が、現実世界との関わりの中で、主観的・相互主観的に作り出すという視点に立ち、「批判主義」は、社会は歴史によって生じているという側面を重視して既存の社会システムを批判し、これらの構造の中に本来含まれる矛盾と衝突を明らかにすることを主眼としている。これらの方法の中にはそれぞれ短所、長所が存在しているが、基本的な立場としては、物理的社会的現実性についての信念、知識の概念についての信念、知識と経験的世界の間の関係に関する信念 によって構成されているとされる。
 結論としてこの論文を通して、複数の哲学的仮定に基づいたより複眼的アプローチを心がけることを提案し、情報システムの研究自体だけでなく、開発・運用にも貢献することを主張している。
【コメント】
自然科学における実験という‘超’実証主義ともいえる環境に身を置いてきた私にとって、ほかの二つのアプローチ方法とても新鮮に感じられた。事象自体だけでなくそこ関係性が重視される分野において、研究方法を哲学上のレベルから考えることは貴重であり、解釈主義のスタンスはとても興味深い。ただ、この場合欠点である客観性を補うには観察者の立場やバイアスを明らかにすることが一助となると考えられるが不可能であろうか?

(2005年4月21日 小池由理)

投稿者 student : 2005年04月21日 09:46

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