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2005年05月26日

吉川とBijker

 吉川弘之、富山哲男、『設計学‐ものづくりの理論』、放送大学教材、2000年、pp.9-42.
1.設計とは
設計は、さまざまな工業製品の生産活動において製品のあるべき姿を定義する人間の創造行為である。しかし、能力は人間に備わる普遍的な能力であり、日々の行動においても設計は重要な役割を果たしている。 人間の創造能力によって作り出したものを人工物と呼び、人工物を実際に作り出す製造の過程(製造:production)と、どのような人工物を作りだすかを考案、指示する過程(生産:manufacturing)に分けられる。設計は人間に備わる普遍的な能力である創造力の一つであり、工業製品の生産だけでなく日々の行動(行為の計画、意思決定など)においても設計は重要な役割を果たしている。
さまざまな人工物、特に工業製品の生産おける設計-建築設計、機械設計、ソフトウェア設計電子機器設計-の役割を考察している。人工物の設計は要求(機能や性能という形で表現されている)を実現する人工物の動作原理、構造や形状、あるいは挙動を決定していく課程である。設計の過程としては要求⇒概念設計⇒詳細設計⇒生産設計であり、その設計課程には①生産者と人工物の使用者をつなぐ役割、②人工物を実際に製造するために必要不可欠な情報を生成する過程であるという意味を持つという。設計学は設計に関わる知見を体系化したもので、基本的に脱領域性が重要であり、かつ普遍的に議論するために、抽象性、一般性が欠かせない。
2.人工物設計の歴史
科学は自然を理解するための法則を発見していのものであるのに対して、技術はその科学の成果を応用して有用な人工物を発明するものである。科学が技術にとってのシーズになってプッシュする場合と、ある技術を開発すること社会的要請がニーズとなって科学の研究をプルする「科学技術史におけるとプッシュ・プルモデル」を核分裂の連鎖反応の論理的な推定と後、原子爆弾開発というニーズにつながったことを例として説明している。しかし、プッシュ・プルモデルでは必ずしも科学歴史が説明しきれないこともある。また、技術が発明されて実余化されて徐々普及し、次第に技術として一般化し社会全体で共通規範技術かする。共通技術は体系化され次第に新しい発明・発見の種として作用する「サークルモデル」がある。産業革命期における蒸気機関の発達、自動車の歴史を例にあげて人工物設計の歴史を説明している。
3.人工物の進化
人工物の進化には①技術進歩による進化(メカトロニクス技術の例)、②社会的な変化による進化(欲求の量的・質的変化:欲求階層説によって説明)、③設計技術そのものの進化(計算技術の発達)などがある。また、設計の失敗(コメット機の墜落事故、タコマ橋の崩壊事故)による設計の進化もあるのである。
<コメント>
設計というのは技術の改良・改善を効果的に果たすための事前作業の一つだというふうに捉えていたのはすごく断片的であることがわかった。 欲求の社会的な変化による設計の進化や設計が人工物の使用者をつなぐ役割をはたすことなどで顧客の満足を最大化するCRM(Customer Relationship Management)の一つとして捉えるのも可能ではないかと思う。
 Bijker, W., Hughes, T. and Pinch T.(editors), 〝The Social Construction of Technological Systems.”, MIT Press., 1987, pp. 1-82

-Trevor J. Pinch, Wiebe E. Bijker, The Social Construction of Facts and Artifacts: Or How The Sociology of Science and the Sociology of Technology Might Benefit Each Other
Pinch&Wiebeは自転車(人口物)の技術的な発展過程のケース・スタディをもちいて、技術と科学を社会構成的なアプローチで述べている。 科学社会学、技術と科学の関係、技術研究の3つの分野で科学と技術の社会的な関係を説明している。 技術と科学は相互にいい影響を与えながら、社会の発展をうながす。 技術研究は社会発展を可能にさせたものだと因果関係的な捉え方ではなく、社会的関係のなかから構成されるものとして社会構成的な観点から説明している。
科学と技術を説明することにあたって2つ-EPOR(The Empirical Programme of Relativism)とSCOT(The Social Construction of Technology)-のアプローチがあげられている。EPORはハードサイエンスでの科学知識の社会構成的な観点を論証することであり、SCOTは技術の社会構造的な観点を論証するものである。 EPORとSCOTの目的は論理的な類似性をもっている。 特に、科学的な発見物の解釈の自由度やソーシャルグループの概念が技術の社会学において経験的な関係から成り立っていることである。

-Thomas P. Hughes, The Evolution of Large Technological Systems
技術システムは複雑で複合的な問題解決から構成される。 技術システムには物理的な人工物以外にも製造会社、投資銀行などのような組織、大学の教育・調査プログラム、法律規定などまで含まれる。 システムビルダーや提携者によって技術システムは発明され、発展されるため技術システムは社会的構成の人工物である。 また、技術システムの相互作用の部分はシステムから成り立っていることから特徴付けられる。 利用可能な手法をとりながら問題解決や目的を満たし、人工物や人の操作による統制の限界が制限される、インプットとアウトプットをもつというのが技術システムの性質であると説明されている。 本章はおもに技術システムの発展のパターンを説明している。 技術システムは段階的に「発明、発展、革新、技術移転、成長・競合・統合」の発展のパターンを見せながら進んでいく。これらの発展パターンは単純に連続的に起るのではなく、重複したり後に戻ったりする。たとえば、発明、発展、革新にはまた、発明が存在しえる。

<コメント>
Pinch&Wiebeは、技術の発展は社会的関係から構成されるものとしてとらえ、技術は社会構成の一部分であるという見方である。一方で、Hughesは、技術は成長するものとして捉えている。しかし、両方とも技術が社会との相互作用の関係であることは同じ見方であろう。 今、急速に発展している技術は社会においての衝突も生じえると思う。 その捉え方としてどういうものがあるだろうか。                            (池 銀貞)
                                   

投稿者 student : 2005年05月26日 06:35

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