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2005年05月12日

Yin, Robert K., "Case Study Research: Design and Methods". Chapter3-6

<3章/データ収集の準備>
 ケーススタディの準備として1研究者の事前のスキル、2特定のケースのための訓練と準備、3ケーススタディプロコトルの開発(洗練)、4パイロットケースの実施の段階が挙げられる.ケーススタディに必要なスキルは以下の5つである:優れた問いと解釈、優れた聞き手であり、自分自身のイデオロギーや先入観にとらわれないこと、適応性と柔軟性、研究中の課題の把握、バイアスをかけないこと。研究者が質の高いケーススタディを実行できるよう準備するためには、集中的な訓練セッションが計画されるべきであると述べている。ケーススタディプロコトルは研究の信頼性を高め、正しいデータ収集のための戦術であり、調査における指針の役割を果たす。ケーススタディ研究の全体像、実地における調査手順、調査問題、論文作成のガイドなどが含まれる.特にリサーチが複数ケーススタディ設計に基づく場合やそれに複数の研究者が参加する場合には、こうした手続きが必要となる.
<4章/証拠の収集>
 ケーススタディの証拠としては以下の6つが挙がる:文献、公的記録、インタビュー、直接的観察、参与観察、物理的なもの、6つの源泉が挙げられる。それぞれにスキルと方法論が存在するが、これらのデータを収集する上での原則は以下の三つが挙がる:複数の根拠を用いること(三角測量的手法)、ケーススタディのデータベースの作成、それぞれの根拠の間に関連性の連鎖を設けること。以上がケース・スタディの構成概念妥当性と信頼性の担保となる。
<5章/ケーススタディの証拠の分析>
 ケーススタディのデータ分析においては分析戦略をもつことが重要である。戦略として大きな枠組みはケーススタディによって明らかにしようとする理論的命題に依拠すること、対抗解釈の論理的妥当性の検証、体系化するための記述的枠組みを開発すること、の3つである。また、これらの戦略は、次の5つの主要な分析技法を用いるべきだとしている:パターン適合、説明構築、時系列分析、論理モデル、ケース間統合(複数ケースの場合)。ただし、すべての証拠に依拠していること、すべての対抗解釈を吟味すること、最も意味ある側面に注目すること、専門的知識を生かすこと、に前提として留意することが必要となる.
<6章/ケーススタディーリポートの作成>
 リポートの作成においてはオーディエンスを意識し、記述形式や構造を選択する必要がある.作成構造としては線形分析構造、比較構造、年代記構造、理論構築構造、「サスペンス」構造、非連続構造の6つが挙げられる.加えてリポート作成の留意点としては、初期の段階から作成すること、必要に応じて実名での記述を考慮すること、レビューによる妥当化を検討することなどが挙げられている.模範的なk−巣スタディーとなるのは重要、完全、代替的な視点の提示、十分な証拠、魅力といった条件を満たすものである.

■コメント
 ケーススタディーという多様になりがちなものを類型化、一般化して再現可能にすることで、クオリティーを保とうとする姿勢が読み取れた.実際には扱う事象によって、一般化が難しいのではないかと想像される部分もあるが、述べられている方法を念頭に置くことは非常に有用だと感じた.
(小池由理)

投稿者 student : 2005年05月12日 08:07

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