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2005年06月16日

Baldwin(2000)

Baldwin, Carliss Y., Kim B. Clark, “Design Rules: The Power of Modularity,” MIT Press, 2000. (邦訳:安藤晴彦訳,『デザイン・ルール―モジュール化パワー―』、東洋経済新報社, 2004)
人間の行為は必ずしも意図され、予測されたものではないが意図的な行為に産物は設計されたものである。設計は特定の機能を発揮する「物事」を創造するプロセスであり、人間の知能と努力の産物で「人工物」と呼ばれる。人工物は進化する。特に、この本が対象にする人工物は20世紀後半に出現した電子計算機(コンピュータ)である。コンピュータは機械の内部構造における電流のオンとオフの点滅パターンによって意味づけられたものが本質で触ることのできない人工物である。設計はある人工物を完全に記述することである。設計パラメータとも呼ばれる、より小さなユニットに分解できる。設計タスクとは人工物が備える「設計パラメータ」を選択することである。「設計構造」は、設計パラメータとパラメータ間の物理的・倫理的な相互依存性を示す一覧表を意味し、設計プロセスの「タスク構造」とは設計を完成させるために行うべきタスクと複数のタスクの結びつきを示す。
モジュール化は、複雑なシステムを取り扱う多くの分野において、有益と認められている概念である。 モジュール化には①モジュール内では相互依存時、モジュール間では独立している、②「抽出」「情報を隠す」「インターフェース」という特性がある。モジュールとは、構造的には互いにと独立しているが、一緒になって動くシステム中の単位である。また、ある複雑なシステムは複雑なシステムを壊さずに小さな部分に分割し、別々で管理ができる。すなわち、単純なインターフェースを持つ個別の抽出を定義することで、その複雑性を隔離できる。抽出によって要素の複雑性が隠される。つまり、モジュール化の概念は、デザイン・ルール、独立したタスク・ブロック、きれいなインターフェース、入れ子状の階層、隠された情報と可視情報の分離によって設計理論の重要原理の集合を補っている。これらは総体として複雑な設計を完成させあるいは複雑な人工物を構築するのに用いられる知識や特定のタスクを人間が管理できるよう分割する手段を提供する。
このような概念をもとにしてモジュール化の創造や設計進化モジュール・クラスターに関して論じられている。モジュール型設計は非集権化した「設計進化」を可能にする。また、先進的な資本市場が存在するときには、モジュール型設計は非集権化した「産業進化」も可能にする(あるモジュール型設計をもつ人工物が、ある先進的な資本市場をもつ経済で創造されたとき、モジュール設計それを平行して、モジュールの周囲に組織される企業や市場からからなる下位産業村が出現し、進化する。これがモジュール・クラスターである。)結局、進化するモジュール型設計のバリューは潜在的な利害関係者の間で異なる多数の方法でバリューの分配は可能である。
<コメント>
モジュール型の設計及び進化による非集権化した産業進化が可能にすることは、企業組織ごとの非集権化した自律・分散型の組織へも影響を及ぼすのではないかと思う。非集権化した産業構造が有効であるためには産業構造の構成要素である企業組織も変化していかざるを得ないと思う。それを企業側が如何に受け入れられるのかは企業の経営革新意識の問題につながることだと思う。                                   <池銀貞>

投稿者 student : 2005年06月16日 09:17

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