« Baldwin(2000) | メイン | Baldwin, Carliss Y., Kim B. Clark, “Design Rules: The Power of Modularity,”MIT Press, 2000. »

2005年06月16日

Baldwin, Carliss Y., Kim B. Clark, “Design Rules: The Power of Modularity,” MIT Press, 2000.

Baldwin, Carliss Y., Kim B. Clark, “Design Rules: The Power of Modularity,” MIT Press, 2000.
(邦訳:安藤晴彦訳,『デザイン・ルール―モジュール化パワー―』,東洋経済新報社, 2004)

【要約】
本書は、複雑適応系の型に従いながら、設計と産業に関する独自の進化理論を構築する。
第Ⅰ部では、理論の対象範囲と基礎的要素の定義を行う。第2章では、対象となる構造は、人工物、設計、設計プロセスにより構成されることを定義する。設計と設計プロセスは細部構造を持ち、より小さな分析単位に分解できる。第3章ではモジュール型の設計と設計プロセスについて扱う。モジュール化を、パラメータ、タスクや人々からなる集合の要素間に存在する特定の関係パターンであると定義する。モジュール化の本質である入れ子状に重なった階層ブロックという特徴的なパターンは、多くの異なる状況において現れる。人工物の「設計のモジュール化」を他の「生産のモジュール化」、「使用のモジュール化」と区別する。最終的には、包括的デザイン・ルールの集合を構築する。第4章では、設計と設計プロセスが依拠する広範な経済的環境を分析する。資本市場経済は、価値創造企業に対して大きな経済的報酬を与えるため、設計をより高い市場価値の方向に引っ張り上げる側面がある。設計のモジュール化(設計と設計の観察可能な特徴)は、設計の変更メカニズムを劇的に変える。モジュール型設計は、実質的に新たな一連のモジュール化オペレータを創り、それが設計全体を高めるための道筋を開く。第5章では、モジュール化オペレータとして、「分離する」、「交換する」、「追加する」、「削除する」、「抽出する」、「転用する」の6つを定義する。モジュール型設計の複雑な変更の多くはこれらのオペレータの組み合わせとして表現できる。
第Ⅱ部では、第Ⅰ部のフレームワークに基づいて、コンピュータ史の詳細を分析する。第6章では、先モジュール化時代(1944-1960)における設計を分析し、モジュール化の祖先を見出す。第7章では、初のモジュール型コンピュータであるIBMシステム/360について分析する。システム・アーキテクトたちは、最初にデザイン・ルールの明示的な集合を通じて設計を分割し、それらのルールを前提に管理システムを作り、その結果、華々しい経済的成功を収めた。第8章では、その実現のために「広範な統制」と呼ばれるIBMが開発した契約構造について扱う。
第Ⅲ部では、経済的価値を追求するための設計進化プロセスについて扱う。第9章では、設計オプションと設計進化の概略について述べる。第10章では、分離と交換に関する分析を行う。第11章では、モジュールごとに複雑さ、可視性、潜在的技術力が異なる場合にまで理論を拡張する。第12章では、DECに着目し、削除と追加のオペレータをどのように活用したかを分析する。第13章では、UNIXを事例に抽出と転用の分析を行う。
第Ⅳ部では、設計の構造とそれを実現するための経済的構造に関する分析を行う。第14章では、設計と産業構造の結合関係を支配する推進力のマップ化とその分析を行う。第15章では、システム/360のプラグ互換周辺機器の開発を用いて、隠されたモジュール間の競争のダイナミクスをモデル化する。

【コメント】
 今週は風邪を引いてしまったため、今回の課題はあまり深く読み込めず、表面的な理解になってしまいました。ごめんなさい。夏休みに再度読んでフォローします。モジュール化を今まではアーキテクチャデザインの効率性という観点から捉えていたが、経済的価値による影響を受けるという視点を本書を読むことにより、加えることができた。   (牧 兼充)

投稿者 student : 2005年06月16日 09:25

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://web.sfc.keio.ac.jp/~jkokuryo/MT3/mt-tb.cgi/70

このリストは、次のエントリーを参照しています: Baldwin, Carliss Y., Kim B. Clark, “Design Rules: The Power of Modularity,” MIT Press, 2000.: