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2005年06月16日

Baldwin, Carliss Y., Kim B. Clark, “DESIGN RULES: The Power of Modularity,” The MIT Press, 2000.(邦訳:安藤晴彦訳、『デザイン・ルール—モジュール化パワー—』、東洋経済新報社、 2004年.)

■概要
本書は、コンピュータという過去半世紀に登場した人工物について、第2~8章でモジュール化とは何か、コンピュータ設計でどのように登場したか、後半第9~13章でモジュール化を用いて何が行えるかを説明する。
モジュール化の本質は入れ子状になった階層ブロックで、設計パラメータは設計のより小さなユニット(マグカップでいえば素材、高さ、ふたの有無など)、設計タスクとはパラメータを選択することである。設計構造行列(DSM)とは設計パラメータ間の階層的な関係性と相互依存性を示すマップで、タスク構造行列(TSM)は設計のタスクとタスク間の優先関係の見取り図である。設計プロセスのTSMは、対応するDSMの像で、基本的同形性を示す。典型的なタスク構造には独立ブロック型、厳格な順次型、階層的ブロック型、ハイブリッド型がある。
モジュール化は、モジュール内では相互依存、モジュール間では独立である。デザイン・ルールとは、他のパラメータの選択には影響するが、そのパラメータ自身は変更されることのない特権的パラメータで、設計プロセスの早い段階でデザイン・ルールを宣言することでパラメータの相互依存性を断ち切ることができる。パラメータには「可視情報」と「隠された情報」があり、複雑性の管理手法である抽出、設計中の相互作用する対立を解消する事前に定められた方法であるインターフェース等を用い、可視情報であるデザイン・ルールと、設計者が自由裁量で変更できる隠されたパラメータを扱うことがモジュール化のプロセスだ。
また、デザイン・ルールは経済的組織のレベルでも生じ、効率的・低コストで集団的事業体を形成・維持することを可能とする契約技術と、大小のグループを調整し方向を示す技術誘導がある。価値の引力は、これらに仲介され、設計と人工物の発展経路に影響を与える。モジュール型設計理論には6つのオペレータ(システムを変化させ、より複雑に成長させる経路またはルートを定義するもの)がある。これは分離、交換、追加、削除、抽出、転用である。これらの特徴はそれらが局所的に実行できることだ。
モジュール化によるコンピュータ設計は1944年にフォン・ノイマンが提唱し、61年にIBMシステム/360に結実し、コンピュータ産業史の転換点となった。IBMはレガシーシステムの制約に苦慮しながらもエミュレータ等のメインシステム以外のモジュール開発等を含め、システム/360を設計、製造、配送、販売する新たなタスク構造を生み出した。さらに、システム/360のタスク構造を契約構造で固める事業体の設計を行った。
モジュール化、即ち分離した単位が独立に機能するように分離することは、人工物の設計に固有の特質であり、モジュール型設計の進化プロセスは、1)6つのモジュール化オペレータにより、2)埋め込まれている有力なオプションを求める、3)多くの設計者たちによる、4)非集権的な探求である。6つのモジュール化オペレータを異なる組み合わせや連鎖で局所的に適用すると、多様で複雑な設計を生み出せる。

■コメント
コンピュータほどの複雑な人工物には、モジュール化したデザイン・ルールが求められる。モジュール化はシステムデザインのみならず、組織体や契約構造にも影響を及ぼす。「映像メディアを用いた協働の場の設計」も、各プロセス(企画、取材、編集)をモジュール化しつつも可視化できることが、有効に機能するひとつの要因なのではないか。
(2005年6月16日 高橋明子)

投稿者 student : 2005年06月16日 10:21

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