素顔なんてないの
子供の頃、玄関先で父に叱られたことがある。
保険会社の地方支店長をしていた父は、宴会の帰りなのか、夜更けにほろ酔い機嫌で客を連れて帰ることがあった。母は客のコートを預ったり座
敷に案内して挨拶をしたりで忙しいので、靴を揃えるのは、小学生の頃から長女の私の役目であった。
『父の詫び状』向田邦子(p.12)
これが本物の家長だとしたら、家長はいま死語だと思います。
昭和は、もう過去の時代なんです。