素顔なんてないの
 

いっつもマジメなヒトってさーあ、ダサいけど、ゼッタイ頼りになるのよ ねー。マジメ人間、尊敬。


まじめを顔に描くと、眼の周りに四角い枠を書いて、顔自体の輪郭を四角に矯正 し、鼻をベチャッとつぶし、唇をぶ厚くしてできあがりです。なんちゅーことはな い、私の顔です。まじめとは、ラッシュするしかないボクサーのようなものです。後 で、パンチ・ドランカーになるのを怖がっては、何もできません。

まじめが恋をすると悲惨です。その顔で、と馬鹿にされるのがオチです。でも前へ 進むことしか知らないまじめは、ここでもラッシュを繰り返します。好きです、好き です。見てられません。ドンキホーテも真っ青です。いい加減にしてよ。
それが、お勉強のことになると、がぜん光輝くサン・デスクになります。いらんこ と考えないでいい、ただ覚えればいいのだ。そうすれば、そこには栄光が待ってい る、と信じて、ニニンガシを開始します。チーン、まじめ君、一気にラッシュです。 素晴らしいことです、栄光が信じられる時は。まじめ、万歳。

まじめ、けじめ、いじめ、みじめ。みんな、ジメジメ

小さい時、まじめな人になりなさい、と教えられてきました。まじめに生きること は大切なことだ、ふまじめ奴は人間の屑だ、と信じてきました。だから、ふまじめな 奴だな、といわれると、涙を流して抗議したものです。僕はまじめなんです、この顔 が証拠です、と訴えました。まじめだったんです。
不思議なことに、そんな顔が醜い、とフト思うことがありました。自信をもってい た四角の顔が急に疎ましいものになりました。いまさら四角を○にするなん不可能で す。眼の前が真っ暗になり、そして世界が変わってしまいました。

恋は魔物です。