« 中間レポート課題 | メイン | 第3回パワーポイント »

2005年05月07日

韓国における新世代の台頭と「ニュー・ライト」(補論)

前回の韓国政治に関する投稿記事を少しフォローアップします。今月号の『中央公論』所収の小針進「ポスト『386世代』の意外な保守回帰現象」が大変面白かったので、このブログでも紹介したいと思います。(cf. 小針進「ポスト『386世代』の意外な保守回帰現象」『中央公論』(2005年5月号))

小針さんは、昨年9月に同僚らと18歳~60歳のソウル市民を対象とした質問票調査に基づき、韓国人の年齢別の政治態度を分析しています。ここでは従来よく見えてこなかった、「386世代以降」の20代が実は意外な「保守回帰」を起こしていることを指摘しています。

例えば「次の国に対して好感が持てますか?」と言う質問に、18~29歳までの日本に対する好感度はきわめて高い(20~29歳代は63%、18~19歳に関しては他国を抑えてトップの71.2%)んです。韓国の若年層は親日的であるという姿が浮かび上がってきます。ところが、30~39歳になるとこの数字が激減し日本への好感度は44.4%、米国には40%という数字に落ち込みます。これが40~49歳台になると回復(日:51.4%、米:64.2%)、50~60歳代では米国の数字が急増する(日:50.3%、米:84.4%)という興味深い数字が示されています。(⇒標本の有効性について問う必要はあると思いますが)

ここから浮かび上がるのは、30~39歳代の386世代の「特異性」です。

対日好感度は、30代を中心に見事な「逆ベルカーブ」を描き、対北朝鮮好感度は「ベルカーブ」となっています。つまり、「386世代」というのは、韓国の世代全体のなかからみても特殊な世代だということが伺えます。そして、20代と10代後半の意識が、いわば40代以降のサンプルと似た「保守回帰」現象を起こしていることも指摘できます。つまり、「韓国の若年層が反日的」という見方は、この調査からは当てはまらないことになるわけですね。もしかすると、盧武鉉政権の「急進性」も意外に短期間で終了する一過性のものなのかもしれませんね。

ところで、「生まれ変わってもわが国で生まれたいか」「今の生活に満足しているか」という質問にたいしても、18~19歳のYESという回答率は高い数値を示しています。ここでも386世代のYESは他世代に比べて低いんですね。(ちなみに私は別のブログでJ-WAVEのオンエアにおける邦楽の占有率の増加について述べた際に、「東京回帰のナショナリズム」として、日本国内での豊かな生活にプライドを持つ層が増えたことを指摘しました) 実は韓国国内でも同様の傾向があって、経済発展と民主化を謳歌する世代が、「ソウルって楽しいしカッコいい」と感じて満足している層の増加を意味しているのだと思います。(⇒たしかに、中国の反日デモが学生中心だったのに比べ、韓国では日章旗を燃やす等の抗議行動は比較的中年層が多いですよね)

ただ、こうした「保守回帰現象」は比較的無自覚なもののように思えます。というのも小針さんも指摘するように、20代の若者は政治的無関心層が多く、投票率も低く、政治離れが進んでいるからです。そこには、20歳年上の世代への「意識的回帰」や、386世代への「意識的抵抗」があるというよりは、むしろ「豊かな生活をもたらしている相互依存関係への認識が現れている」といったほうが正確ではないか、と思います(もっとも20代の北朝鮮への好感度は高く、これを上手く説明することはできないのですが・・・)。

「386世代」への批判は、むしろ「386世代」の中からでているようです。これが、一昨日紹介した「ニュー・ライト」の台頭です。「ニュー・ライト」運動が、20代以降の新しい世代を巻き込む勢力となっていくのか、これが今後の韓国政治をみるひとつの座標軸と考えるというのは、いかがでしょうか。私はけっこう面白い視点だと思っています。

投稿者 jimbo : 2005年05月07日 02:05

コメント